【経済学科】倉田洋教授の論文が国際学術雑誌に掲載されました
2025年03月04日
経済学科の倉田洋教授とマギル大学(カナダ)のNgo Van Long教授(2022年逝去)の共著論文”Is implicit cooperation reasonable for the economy? Corporate environmentalism under Kantian behavior”(暗黙の了解は経済にとって望ましいか? カント的行動のもとでの企業環境主義)が、経済学分野の国際学術雑誌Economic Modellingに掲載されました。
論文のテーマは、企業の自主的な環境投資です。近年、企業は持続可能な開発目標(SDGs)に沿った環境保護に対する取り組みに力を入れるようになってきました。例えば、世界中の自動車メーカーが電気自動車など低CO2排出車の開発、製造工程の改善、リサイクルなどの活動に多額の投資を行っています。
企業の環境投資に関する先行研究においては、各企業が非協力的に戦略を決定するナッシュ的行動を仮定して分析が行われており、その場合、環境投資は社会的に望ましい水準を下回ることが知られています。しかし、環境は地球上に住んでいる人みんなで共有するものであり、環境協定のような明示的なきまりがなくとも協力すると考えられます。このように明示的なきまりなく協力的な戦略がとられることを「暗黙の協力」といいます。
この研究では、各主体が道徳や理性に従って行動を決めるカント的行動を仮定することで暗黙の協力が行われる状況を描写し、環境投資が社会的に望ましい水準となるかどうかについて検証しました。
その結果、企業数が少数である寡占市場で、生産を行うと環境への被害が及ぶような状況において、各企業が自社および他社の環境被害について懸念しているとき、カント的行動のもとでは、環境投資が社会的に望ましい水準となる可能性が見出されました。また、環境被害に対する懸念が大きすぎる場合には、環境投資は社会的に望ましい水準を上回ることも示唆されました。これらの結果は、従来の寡占市場における環境投資に関する研究では得られなかった新しい知見であり、倉田教授は今後も、暗黙の協力が可能な状況のもとで、経済主体がどのように行動するのか、政府・自治体がどのような政策を行うことが望ましいかについて研究を進めていく予定です。
本研究は、科研費基盤C 22K01465(研究代表者:倉田 洋)の助成を受けて行われた研究成果です。
【論文情報】
タイトル:Is implicit cooperation reasonable for the economy? Corporate environmentalism under Kantian behavior
著者:Hiroshi Kurata , Ngo Van Long
掲載誌:Economic Modelling Vol. 146, May, 2025, 107029, Elsevier
Cite Score=8.0, Impact Factor=4.2
SCImago Journal Rank=Q1 in Economics, Econometrics and Finance
DOI:10.1016/j.econmod.2025.107029