東北学院大学

法学部

基礎演習Ⅱ(テーマ「18歳成人」)を終えて

2022年08月22日

 教員の羽田です。2022年度前期に行われた基礎演習Ⅱの内容と、そこで得られた受講生の学びについてなど、この場をお借りして振り返ってみたいと思います。

 18歳成人への制度改正により、今年の4月から、18歳・19歳に次のような変化が訪れました。
 ① 親の管理から離れて自由に住むところや仕事を決めることができるようになった。
 ② 親の同意に関係なく契約ができるようになったが、未成年取消権を失い、不利な内容でも契約の責任を負うことにもなった。
 ③ 男女ともに親の同意を得ずに結婚することができるようになった。

 4月に行われた第1回の演習において、以上の説明を簡単に行ってから、受講生の意識に関する簡単なアンケートを実施しました(25名登録、22名回答)。その結果についてご紹介しましょう。

1.本講義を受ける前に、18歳以上が成人になることについて、全員が知っていました。
 実際に受講生の耳に届いたのはどこからの情報であったかを尋ねたところ、メディアが圧倒的でした(19名、86.4%)。当事者である彼らには大事件だと思うのですが、親族・友人(10名、45.5%)や高校の先生(8名、36.4%)との間では、それほど話題に上らなかったのでしょうか。
 企業広告(0名)はともかく、専門家の話を聞く機会が誰もなかったのは(0名)、専門家として残念に思います。

2.制度改正の受け止め方は、下記の通り、肯定・否定・中立と、ほぼ3つに分かれています。

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3.次に、この制度によって実際に世の中が良くなると考えられる点は何でしょうか(複数回答)。
 若者の自立・自活が促されること(16名、72.7%)、金融の知識や能力の獲得が促されること(13名、59.1%)、政治参加が盛んになること(8名、36.4%)、に支持が集まりました。親離れにより親子問題が解消される(3名、13.6%)・若者の婚姻が増える(1名、4.5%)・若者が社会的義務の担い手になる(1名、4.5%)といった見方はあまりされていないようでした。

4.18歳・19歳の消費者トラブルが増えて社会問題になるのではないか、という指摘がされることがあります。実際に大きな問題になりそうだと考えるものは何でしょうか(複数回答)。
 「クレジットカードの使い過ぎ」・「怪しい投資勧誘に乗ってお金を失う」がもっとも危険視されていました(ともに16名、72.7%)。3⃣で金融知識の重要性が意識されていたからでしょうか。
 売買トラブルについては、「不動産購入」がらみの問題はほとんどなく(1名、4.5%)、その他の「問題のある商品・サービスを若者が購入すること」(11名、50%)や「問題のある取引を若者が勧誘すること」(7名、31.8%)があるのではないか、と考えられていました。被害だけでなく加害の可能性も意識されていたのが印象的です。
 「犯罪がらみの仕事に就職して逃げられない」(11名、50%)・「不利な条件で就職し低賃金に苦しむこと」(9名、40.9%)といった労働関係の問題が生じること、「成人ゆえに周囲の支援が得られず生活苦に陥ること」(10名、45.5%)も懸念されています。労働契約を自分で結ぶこと、早々に自立することに対する不安があるからでしょうか。
 このアンケートのあと、財産関連の法律や制度の大枠をこの演習で学んだわけですが、この演習が終わった後も、さらに法制度の学習を進めるとともに、困ったときの社会的サポートについてもしっかり学んでいってほしいと思います。

羽田 さゆり