東北学院大学

法学部

「18歳成人」とお金・その2(消費者契約法など)

2022年08月29日

 引き続き、受講生の「感想」を紹介します。今度は消費者保護関連の制度がテーマです。
 
 未成年取消権の対象でなくても、年齢を問わず、消費者保護の制度を利用することができます。18歳成人をきっかけに、「消費者取消権」を増やす内容で「消費者契約法」が改正されました。そのほか「特定商取引法」などの定める「クーリング・オフ」が、便利な制度として広く知られています。
 さて、これら消費者保護の制度で、今後18歳・19歳は大丈夫、と感じるでしょうか。それを確認したかったのが、今回の課題です。

 C班の課題裁判例である、東京高判平30.4.18判時2379-28は、広告や業者の説明から通信速度制限がないと思ってモバイルWi-Fiルーターを契約したら、制限があった、という事案でした。「クーリング・オフ」が利用できず、「消費者取消権」が認められました。

問い
 若者を問題のある取引から守るために、消費者契約法による取消しができる範囲を広げるなど、消費者保護のためのルールが整備されてきています。
 消費者取消権が問題となった裁判例について学び、あなたは「消費者取消権という制度が消費者保護に果たす役割」と「それを若者が活用することができるか」について、どう感じましたか。

 

・私は、消費者取消権という制度は消費者保護の点で非常に役に立っていると考える。なぜなら、消費者契約法は、消費者と事業者の商品に関する情報や交渉力の格差によっておこる問題を解決するものであり、内容は民法と比べて消費者にとって優しいものとなっているからである。しかし、私はその制度の若者が活用できるかについて、現時点では私と同年代の人には消費者取消権があまり認知されていないので難しいのではないかと感じた。(U.S.)

・消費者契約法の消費者取消権には不当な勧誘による契約の取消しと不当な契約条項の無効等の役割があります。これは消費者が誤って契約したり、無理やり契約させられたりしたときに大きな役割を果たします。特に現在18歳で成人になったことで、今まで未成年取消権に守られていた若者が急に契約をしようとしてもミスは多く起こります。さらにまだ子どもだからとつけ込んでくる悪い大人からも守ってくれます。若者はこれを活用しなければならないと感じました。(Y.K.)

・契約をする際に、対象となるものやサービスの内容・効果や価格など重要な事項について、事実とは違う説明をするという不実告知に騙されてしまい、泣き寝入りしてしまう消費者が多いのが実情です。そのような問題を防止する消費者取消権はとても必要な権利だと感じました。消費者契約法が改正されるなど整備されてきているので、若者も意識を高める必要があると思います。(T.K.)

・消費者取消権は、不当な勧誘等を受け、一度契約してしまったものを取り消すことができる制度なので、不当な勧誘を受け納得できないまま契約してしまった場合や、勘違いや脅し等で契約してしまった場合などに契約をなかったことにする強い権利なので、消費者保護に非常に大きな役割を果たしていると考える。
 この消費者取消権を若者が活用できるか。成人年齢が18歳に引き下げられ、それに伴い契約などの権利を使える若者が非常に増えたので、この制度は若者が必ず知るべき制度だと思うが、活用できるかについては、あまり馴染みのない制度だと思うので難しいと感じた。(W.A.)

羽田のコメント:「消費者取消権」の重要性は認めつつ、活用はなかなか難しそうだという感想を持つに至ったようです。クーリング・オフのほうが簡易な制度ですが、使えない場合が意外とあるので、「消費者取消権」を広く知ってもらい、活用していく工夫が今後いっそう求められますね。

羽田 さゆり