東北学院大学

法学部

「18歳成人」とお金・その3(消費貸借)

2022年09月01日

 引き続き、受講生の「感想」を紹介します。今度は借金のしくみ(消費貸借)がテーマです。
 
1.18歳・19歳もお金を借りられるようになりました。便利になったとはいえますが、しっかり契約相手や内容を確認しないと、たいへん恐ろしいことになりかねません。

 D班の課題裁判例である、最判平20.6.10民集62-6-1488の事案をよく読むと、暴力団傘下のヤミ金融からお金を借りてしまった人がどんな辛い目に遭ったかがうかがい知れます。結論として組織トップへの損害賠償請求が認められましたが、だからといって、こんなお金の借り方をしてもいいとは、とても思えないはずです。そんな教訓を得てもらうのが今回の目標でした。

問い
 18歳・19歳も、自分の判断でお金を借りることができるようになりました。
 かなり昔から、利息が高額になりすぎないよう法規制がなされていますが、それでも、色々な事情で、利息が高額すぎるなど、違法な内容でお金を借りる契約をしてしまう人がいるのが現状です。
 いわゆるヤミ金融との間で、違法な内容でお金を借りる契約をしてしまった人の裁判例について学び、あなたは「お金を借りることに関連する法規制の内容」と「若者の被害をどうやって防止すればいいのか」について、どう感じましたか。

 

・お金を借りることに関する法規制の内容について、お金自身は一度で大量に搾取されなくなったが、借主の保障をしなければ、法規制の効果が薄いと考える。そのため、私はまだ改善の余地があると感じた。
 若者の被害をどう防止するかについて、借金で困った場合は、必ず弁護士や金融庁などに相談してほしいと感じた。法的根拠のあるアドバイスを受けながら、適切に借金の返済を目指すことで、ヤミ金融業者の排斥につながるからである。(S.S.)

・私は、さらに細かい事例にも対応できる法制度を今後模索していくべきだと感じた。今回、金融にまつわる事例を解いてみて、決して他人事ではなくかなり身近な問題であることを自覚することができた。また、成人年齢が引き下がったことにより私よりも知識を持たない人が成人として扱われ、すべての大人と対等な存在となる。故に、お金に関する知識がないまま金融問題に直面する前に、なるべく早い段階から(中学生くらいから)教育の場面で金融についての知識を教授することで被害を少しは抑えることができるのではないか考えた。(M.M.)

羽田のコメント:知識なしにお金を借りてしまうことに加えて、お金を借りなければならないような事態に陥ることを防ぐ必要性を意識してもらえたようです。 被害相談のできる存在や、金融教育が必要ですね。

2.なおこの演習では、制度改正時期に合わせてこの世代の若者を勧誘しているとみられる、怪しい広告類の情報を受講生から募集していました。
 すると1件、有名な証券会社との「連携」をうたって学習会に誘うSMSの情報が寄せられました。演習において、記載内容の法的問題点など詳細な解説を施したところです。
 近年、若者に対する詐欺的な投資勧誘被害が増えていると言われています(国民生活センター「詐欺的な投資勧誘トラブル」)。今回情報提供のあったSMSもその類のものでしょう。
 投資マルチ商法の場合、若者が“加害者”になってしまう恐れもあります(「コロナで困窮、バイト感覚で投資マルチへ「高校生も草刈り場」」朝日新聞2021年10月5日記事)。法律をしっかり勉強すると、怪しい勧誘に引っかかりにくくなるはずです。今後も気を付けて欲しいものです。

羽田 さゆり