東北学院大学

法学部

「18歳成人」とお金・その5(不法行為(監督義務者責任))

2022年09月08日

 受講生の「感想」紹介の最終回です。今回は未成年者による違法行為(不法行為)に関する、親の責任をテーマにしました。下記の通り、18歳成人との関係はやや薄い問題ですが、自分が未成年だったころの親との関わりを振り返り、自分が親になった時のありうる未来を考えることに意味はあるでしょう。
 
 日本では「未成年の子の違法行為の責任は、たいてい親(親権者)が負う」ということになっています。しかし、F班の課題判例である最判平27.4.9民集69-3-455(サッカーボール訴訟)では、子どもの普通の遊びの範囲内の行為で損害が発生したとしても、親が「通常のしつけ」をしていれば、親は責任を負わない、というものでした。そこで「通常のしつけ」とは何か、親はどうすべきなのか、ということを尋ねてみたつもりです。

問い
 若者が違法な活動をした場合において、若者自身が損害賠償責任を負うかは、成人か否かではなく、その若者が「責任能力」(自分の行動の法的責任について理解し弁えることのできる能力)を有するか否かで判断されます。一般的に12歳前後で「責任能力」は身につくと考えられています。責任能力がある若者は、自ら損害賠償責任を負うことになります。
 若者が未成年の場合、親も、子を監督する義務に違反したことを理由に損害賠償責任を負うことがあります。未成年者に責任能力がなく、自ら損害賠償責任を負わないときには、ほとんどの場合、親が責任を負うと考えられていました。
 
 そのような中、親の責任を否定する裁判例がわずかながらあります。
 未成年者であっても、現代の子の活動の幅は昔に比べかなり広がっています。あなたは「子が加害者・被害者にならないようにするために、今、親は子とどう関わればいいのか」について、どう考えますか。

 

・成人年齢が18歳に引き下げられた現代の日本だが、未成年者であってもその活動領域は良くも悪くも広がってきている。子供が親の保護の元から離れやすくなっている現代において、自分の子供が加害者・被害者にならないようにするためには、子供との会話の機会を多く設けることだと考える。幼いころから多く接触することで、距離感を常に測りながら、コミュニケーションを欠かさないことが必要である。互いの動向や現状を常に共有しあうことで、トラブルに巻き込まれる事態を未然に防ぐことに繋がると考えている。(W.R.)

・現代の子供の活動の幅はとても増えている。以前は学校などが子供のコミュニティであったが、学校だけでなくネット上で知らない人と関わったり、動画投稿活動をしていたり様々な活動をしている人も多い。子供が加害者・被害者にならないように、親は終始干渉してもよいと思う。子どもは嫌がるだろうが、スマホの使い方やSNSに制限を付ける、親も閲覧できる状態にするなどの解決策を取ることが子供や親にとっても良いと考える。(S.H.)

・私は、現代の子供たちに対しての親の関わり方は、しっかり話を聞いたあげることが大事だと考えた。現代の子供たちは、ネット上に悩んでることを書いたり、苛立ちを覚えた時に、SNS や、ネットに書き込みをし、ストレス発散することもあるということです。それでは感情的に動く人間になってしまう可能性がある。過度に接しなくとも、そこでしっかり親として悩みを聞き、それに対する対応を教えてあげるのが務めだと考えた。(S.K.)

・現代っ子の親との関わり方について考えられることは、親が子供のことについて理解することが大事だと考えた。しかし、それは簡単なことではなく失敗に終わる形が多い。 そこで、親ができることは子供の自立したい精神を尊重しある程度子供に任せる事が大事であり、失敗したときの経験をさせることで自己責任を覚え、大人になるということへの危機感を自分自身で体験することでのびのび成長でき親との関係も良好になるのではないかと考えた。(O.N.)

・現代の子の活動の幅が広がっているため、親の監視下という状況の割合が減っている。また、未成年の場合、監督義務に違反したことを理由に損害賠償請求を親が負うことがある。つまり、子の行動が親と密接に関係している。そのため、日常生活の中でコミュニケーションとることが重要である。特に、善悪の判断などは些細なことであっても指摘して、何故ダメなのかを教える。また、周囲の環境や人への気配りも教育すべきである。(H.Y.)

羽田のコメント: 日常的にコミュニケーションを欠かさないこと、が多数解のようですね。関わり方がだんだん難しくなってくる年頃である18歳・19歳が、この理論の枠組みから外れ、今後はその親が法的責任を負わなくなるのだとするならば、親は少し楽になるのでしょうか…。

 今回で、この連載記事は終わります。
 あえて法的な解説をかなり省いておりますが、未成年者や18歳・19歳について、法的地位やお金がらみの制度について、調べて考える手掛かりになれば幸いです。

 特に18歳成人に関連してはインターネット上の情報が豊富です。人気アニメのキャラクターが登場する政府広報を始め、硬軟さまざまな情報がありますので、みなさんも検索窓を開いてみてはいかがでしょうか。

 羽田 さゆり