東北学院大学

法学部

映画で考える難民問題 ~松浦ゼミの基礎演習Ⅰ~

2022年10月06日

 松浦ゼミの基礎演習Ⅰでは、国際法の観点から難民問題に関する国内裁判例を検討しています。難民を保護(庇護)するためには、1951年の「難民の地位に関する条約」(難民条約)第1条A(2)をどのように適用するのか、証拠に基づく事実認定から法律問題まで、裁判の現状を想像して理解する必要があります。法学部の1年生にはまだまだ難しく感じられる課題ですが、こうした法律問題の背後に、迫害を受けたり、または迫害のおそれがあって、国外に逃げざるを得なかった一人ひとりの人生の重みを認識することができれば有益だろうと考えています。今回は、『ヒトラーに盗られたうさぎ』という映画を視聴し、難民(亡命者)となる背景やその状況を想像する機会を持ちました。学生達から寄せられた声をご紹介します。 

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 K.T.さん:この映画を見て、まず『ヒトラーに盗られたうさぎ』というタイトルが印象的だと感じました。あえて盗られたという表現を使うことで奪われたイメージが鮮明に浮かびます。特に亡命しようとする場面で、母が娘のアンナと兄のマックスに「本は2冊、オモチャは1個まで」と言うシーンと、家を出る際にアンナがキッチンやピアノ、壁などに別れを告げるシーンが心に残りました。追い詰められている状況の中で幼い女の子がぬいぐるみを一つに選ばなければならないことや、人ではなく、家具に別れを告げていたのが胸が痛くなりました。「人生はいい時も、悪い時もある」という父親の発言はその通りだと思いました。

 Y.S.さん:ヒトラーが選挙された後の独裁を極めていた政治については、歴史の授業や他の映画、ドキュメンタリーなどで良く取り上げられていたため、ある程度どのような状況にあったかは知っていた。しかし、この映画では、それ以前からの人々のリアルな生活がベルリンに住むユダヤ人家族を題材に描かれていることから、ひしひしと迫り来るヒトラーによる迫害の恐怖をいっそう強く感じることができた。

 M.K.さん:迫害から逃れるために家族皆で逃げ、どんな状況でも乗り越えていく場面が多く、家族の絆を強く感じました。人間はやはり1人では生きていけないのではないかと思います。皆で助け合いながら心を通わせて生きることが、人々の生きがいに繋がるのだと強く感じました。

 H.E.さん:当時のナチス・ドイツによるユダヤ人への迫害がいかに酷かったのかを知ると同時に、現代でも問題となっている人種差別や難民問題の状況と結び付けて考えることができた。この映画での逃避行のように、現代でも迫害などを理由に国を追われている難民も数多くいるので、難民について理解を深めることが重要だと思った。

 H.N.さん:ヒトラーの独裁によって強制収容所に送られたユダヤ人の話は何度も聞いたことがあったが、生き残るため海外に逃亡した人の話は聞いたことがなかったので、非常に興味深い内容だった。主人公のアンナが9歳という若さで、ヒトラーの弾圧から逃げるため、様々な感情を押し殺して生活していたのだと思うと、いたたまれなさを感じた。また、私はヒトラーの独裁による結末を知っているからか、兄妹の3か月経ったら再びドイツの家に帰れると信じて疑わない言葉にも切なさを感じた。ヒトラーがユダヤ人にもたらした影響の大きさを改めて実感するとともに、当時の人々の強さも感じ取ることができた。

 S.N.さん:「自由」の大切さを痛感しました。なぜなら、主人公は住みたい場所や一緒にいたい人を自由に選ぶことができずに、毎日辛い日々を送っているように感じたからです。しかし、そのような場所でも自由をつかむために努力している姿がとても印象的でした。今の私たちは行きたい大学や住みたい場所を自由に決めることができます。映画の主人公よりは自由な生活を送れています。私たちは自由に生きられる分だけ、自分にとって最善の生き方をしていこうと強く思いました。