東北学院大学

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大災害をどのように克服していくか 世界の先進的な事例報告とこれからの地域の取り組みを考える PartⅠ

2012年02月14日

文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業

「地域災害と環境脆弱性の克服」についての国際会議と地域会議開催

 1月20日・21日の両日、「大災害をどのように克服したらよいか、地域に即して地域の方々とともに考えていこう」という3つの会議が開催され、地域住民や全国の自治体関係者、研究者、学生など延べ400人が参加しました。
 会場となった土樋キャンパス押川記念ホールには、災害復興や環境悪化についての様々な課題に直面している多様な研究者らが一堂に会し、東日本大震災の被災地はもとより世界各地において、それぞれの災害復興や環境悪化の克服にむけた多くの努力と活動が進められている現状の発表が行われました。フロアを交えた議論や意見交換も活発に行われ、3つの会議は「地域災害脆弱性の克服と持続基盤形成を促す大学・地域恊働拠点の構築」をめざす本学の復興研究計画プロジェクトのキックオフ会議としての役割を果たしました。

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開催に先立って、星宮学長が挨拶

6カ国・8つの事例報告

 20日午前、日本を含む諸外国が立ち向かっている災害克服や環境修復についての先進的な事例を報告する「国際会議」が行われました。
 星宮望学長、柴田良孝総務担当副学長の挨拶に続いて、宮城豊彦教授(教養学部地域構想学科)が、「減災には、地域の人々と我々が地域の脆弱生を知り尽し、次にくる大きな災害時に自主的な退避行動に結びつけることが重要。そうした地域社会と個人の資質をつくるためにできることを一緒に考えていきたい」と開催趣旨を述べ、また、「海岸林の津波軽減効果」についての調査報告を通して、「ねばり強く、現地の知見に基づいた復興を」と訴えました。
 続いて、タイ、ベトナム、アメリカ、中国、韓国、琉球大学の研究者らが報告。大津波(タイ)、土石流(中国)、斜面崩落(韓国)などの自然災害や戦時下での環境破壊(ベトナム)からの修復活動、自然災害を予測し早期対応に活用する気象モニタリング(アメリカ)や数値シミュレーション(韓国)の構築などの取り組みが示されました。
 西表島の環境破壊についての調査を続ける琉球大学の研究グループは、「地域の伝統的な知恵は、環境問題を解くもっとも重要な知識」と指摘していました。

災害克服に地域の知恵

 午後から行われた「地域会議」では、被災地域が直面している様々な課題や災害克服に向けた活動など16の事例が報告されました。
 はじめに宮城教授が開催説明を行い、「これからの2年の間に、我々は減災への理解を進め、何が減災のために本当に必要かを突き詰めていかなくてはならない。それは学問のためだけでなく、地域のために必要」と述べました。

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趣旨説明に立った教養学部地域構想学科 宮城豊彦教授

地域からの報告

 現地で活動する住民や行政関係者が地域防災、復興のあり方などについて報告がなされました。自主防災会を組織し、防災マップを作るなどの活動を続けていた七ヶ浜町花渕浜地区の事例は、住民主体の防災体制づくりの重要性を印象づけ、続いての塩釜市浦戸野々島、七ヶ浜町、多賀城市、気仙沼市の各担当者の発表は、それぞれの災害状況や対応、防災への取り組み、復興にあたっての重点課題などの報告でした。

研究者からの報告

 本学教養学部教授陣や地域文化研究者らが、それぞれの調査を通して、災害克服に求められる多様な地域理解について報告。

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多くの関係者と学生、市民が傾聴する報告会

 仙台市若林区での被災時の民生委員の活動、地質学による古津波との比較研究、津波記念碑が示す三陸沿岸の生活文化、津波被災地に対する唐桑地区の住民意識、こどもの健康支援などの現地調査から、それぞれにこれからの地域防災のあり方や生活再生の方向性を検証。食品スーパーや復興特区に着目した調査からは、地域経済復興を担う新たなコミュニティビジネス構想の可能性も示されました。
 仙台湾/海岸エコトーン復興をめざしたモニタリング調査などの現状報告は、翌日のサテライト会議にも引き継がれました。
 最後に、本学における地域情報力カスタマイズユニットの構築とGIS防災地図作製の将来性についての報告が行われ、1日目の会議は9時から18時までのロングランでしたが、盛会のうちに終了しました。

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翌日の「仙台湾/海岸エコトーン」への導入を説明する、教養学部地域構想学科の平吹喜彦教授



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