総合人文学科長吉田 新 私たちを取り巻く環境は日々、目まぐるしく変化しています。将来の予測がますます困難になる時代に生きています。そのような中で、即座に活用できる実践的な知識の修得が求められています。変化に柔軟に対応できるようなスキルです。しかし一方で、人生にとって大切な知識というのはそう易々と手に入るものではありません。大学では、先のような実践的な知識を多く学ぶことができますが、すぐに答えの出ない問いを深く考えることも大切です。「人間とは何か」「幸福とは何か」「美とは何か」といった、古くから人間が向き合ってきた問いです。総合人文学科では創設以来、思想・哲学、文化・芸術、宗教・神学といった多様な分野から、このような根源的な問題を考察する力を養うことを目指しています。 なかなか答えの出ない問題を考える際、じっくりと時間をかけることが大切だと思います。数日、数カ月、または何年も考え続けることです。これについて、具体的な例をあげて説明します。暖をとるためストーブに薪をくべる際、切り出したばかりの木を入れると煙ばかりが出てしまい、あまり暖かくなりません。なぜなら、薪に含まれている水分が多すぎると燃えにくくなるからです。そこで、薪を十分に乾燥させ、水分を減らすことが必要です。薪は伐採した後、1年から2年間ほど、乾燥させるために保管しておきます。乾燥中の薪は、ただ置いてあるわけですから、傍から見ると何も変わってないように思えます。しかし、薪の内部では、よく燃えるための準備が着実に進んでいるのです。 先のような問いを考える時、すぐに簡単な答えを出してしまうと、しっかりと燃えない薪のような状態になってしまいます。問題の本質に十分に到達できないまま終わってしまいます。このため、落ち着いて問いと向き合う時間が求められるのです。総合人文学科での4年間の学びを通じて、こうした考える時間を持ってほしいと思います。本学科では自分にとって大切な問いを、様々な視点から考察できるカリキュラムが用意されています。多角的なアプローチで深い学びを目指している方をわたしたちは心から歓迎いたします。