東北学院大学

文学部 総合人文学科

学科長あいさつ

「人間とは何か?」を広く深く探究する

総合人文学科長
木村 純二

「総合人文学科は、人文学を広く総合的に学ぶことのできる学科です!」そう言われても何を学ぶところなのか、あまりピンと来ないかもしれません。科学が自然現象を対象に、その法則を実験によって明らかにする学問だとすれば、人文学が対象にするのは人間の文化です。総合人文学科のカリキュラムは「思想・哲学」「文化・芸術」「宗教・神学」の3分野で構成されていますが、哲学・芸術・宗教といった人間の営みを通じて、究極的には「人間とは何か?」という問題を探究しています。

人間は、神に対しては罪深い存在ですが、悪魔にはない美しく善い心を持っています。動物に比べれば理性的ですが、ロボットやAIにはない感情を持っています。いったい人間とは何者なのでしょう?もちろん総合人文学科の各授業では、より具体的なテーマが取り扱われていますが、そのすべてが「人間とは何か?」という根源的な問いに貫かれています。

自然界の法則を解明する学問であった科学がやがてその法則性を利用して人間社会に有用な技術を生み出すようになり、19世紀には科学の進歩が人類の幸福をもたらすという価値観が広まりました。しかし20世紀には、科学兵器による大量殺戮を引き起こした世界大戦が二度も発生し、また自然界の破壊・汚染により地球環境が危機に陥るなど、人間の作り出した科学技術がそれまでにない大きな被害をもたらしました。21世紀の現代は「人間とは何者であり、その使命は何であるか?」という究極的な問題がよりいっそう深く問われる時代になったと言えるでしょう。その思索の拠りどころとなるのは、近代の人類が進歩と共に切り捨ててしまった過去の哲学・芸術・宗教が持つ深い叡智にほかなりません。

通信機器の発達した現代では、インターネットで検索すれば何でも知ることができると思われがちですが、人間にとって本当に大切なものはネットで知ることができません。なぜなら、それは自分自身で思索して体得しなければならないからです。ネットで調べれば何でも分かると思っている人は、最初からネットで調べれば分かる程度のことしか知ろうとしていないのです。

総合人文学科での学びにおいては、真の叡智に近づくべく、過去の文献や芸術作品と向き合い対話することを通じて、根源的な読解力・思索力・解釈力・表現力等を習得してゆきます。こうした深みのある力は、時間をかけなければ身につきません。そして、それらは若い時にこそ身につけるべき力でしょう。少数教育で教員と学生の距離が近い総合人文学科では、4年間の学びを通じて人間としての深い力をじっくりと習得してゆくことができます。流行に左右されず、確固とした自己の確立を目指す学生を歓迎します。