座談会卒業生×学生 株式会社ヘラルボニー・松田 文登さんをお迎えして 政策デザイン学科の学生たちが、憧れの先輩・松田文登さんに気になっていたあんなことやこんなことをお聞きしました。座談会の様子は8つに分けて連載します。 ゲスト 松田 文登さん/株式会社ヘラルボニー代表取締役Co-CEO東北学院大学経済学部共生社会経済学科 卒業生(2期生) 参加学生 大藏 のどか/政策デザイン学科1年・仙台白百合学園高等学校出身 大友 唯/同1年・宮城学院高等学校出身 清藤 理乃/同2年・聖ウルスラ学院英智高等学校出身 後藤 麻緒/同2年・宮城県泉館山高等学校出身 佐藤 理枝/同2年・山形学院高等学校出身 三瓶 莉穂/同2年・宮城県仙台三桜高等学校出身 松田 拓也/同2年・山形学院高等学校出身 司会 熊沢 由美/政策デザイン学科教員(ゲストが在学中は共生社会経済学科所属) 日時 2025年3月1日(土) 夕方 場所 東北学院大学 五橋キャンパス シュネーダー記念館1階「未来の扉センター」 ※この座談会は、同日に開催された東北学院大学スタートアップ講演会~五橋インパクト:伝統と革新が紡ぐ新たな鼓動~の後に開催されました。 #01 社会に「問い」を与える社会起業家――ヘラルボニーのあらたな挑戦 《学生・清藤理乃》 松田さんが〔講演の〕冒頭でおっしゃっていた「障害を『異彩』と定義することで、障害への潜在的なネガティヴなイメージを根本的に変えていく」っていうことで、異彩を放つアーティストの作品を正当にビジネスに乗せていくあり方が素晴らしいなと感じました。 《松田文登さん》 ありがとうございます。 《学生・清藤》 そのうえで、ご質問です。ヘラルボニーが障害のある方の特性を生かしてビジネスモデルを実践するっていうかたちが、社会や業界から、批判とか懸念の声があがるってこともあったんじゃないかなって思って。もし、それがあった場合に、その批判に対してどう対応されたかとか、そうした反応を受けて、それをどのように改善していったかっていうことについてお伺いしたいです。 《松田文登さん》 とてもいい質問で、ありがとうございます。 やっぱり「経済性」と「福祉」っていうのって、けっこう水と油に分離されがちで。そもそも福祉にビジネスをもちこむとなった時点で、それに対してのアレルギー反応がある人っていうのは一定数は存在しています。それは、まず事実としてある。もっというと、「インパクトスタートアップ」っていうソーシャル系の会社のビジネスで、本当に伸ばしていこうって考えていったときに、経済性を追っていくとどうしても、社会課題が根深ければ根深すぎるほど、なんかこう社会側から見ると、搾取はしてないけど、搾取的構造に見えて〔しまう〕。でも、福祉に寄れば寄りすぎるほど、かれらに対して寄れば寄りすぎるほど、ビジネスにならん、みたいな。 いま〔ヘラルボニーが〕株式会社として挑戦していくなかで、非営利のあらたな仕組みをつくろうと思っています。それは、異彩を放つ手前の方々なのか――「異彩」っていうそのものが、いろんなものが存在していると思っていて。そこに対して、いろんな仕組みを通じて、社会に発信していく。強度行動障害のある方もそうかもしれないし、重度心身障害のある方たちも含めて「いろんな異彩が存在している」っていうものを模索していけるような、そういうあらたな場所をつくろうと思っています。 それがあることによって〔当事者が〕置いてきぼりにならない仕組み。そこを強く作っていくことは、いま会社が成長していくなかで、かなり重要度が高いと思ってます。 ただ、批判っていうのは……。「批判されてやっと一人前」じゃないですけど、〔わたしたちの事業は〕社会に問いを与えている行為そのものなので、そこに対して批判もない、無風がいちばん寒いというか。会社で無風をやっていることがいちばん問題だと思うので。そういう意味で、考えたことがなかった問いを与えられるっていう意味では、〔批判されるという〕そのぐらいを目指していくのが「社会起業家」っていわれる人たちの重要度高い部分なんじゃないかなって、わたし自身は思っているところです。 《学生・清藤》 ありがとうございます。わたし自身がその、福祉とビジネスを結びつけたものについて、すごく興味があるので。 《松田文登さん》 どんなことに魅かれたんですか? 《学生・清藤さん》 具体的なことはまだ……。福祉分野とビジネスを掛け合わせたものを作ってみたいなっていう思いがあって。そう考えたときにやっぱり、福祉と経済っていうのは、さきほどおっしゃったみたいに、水と油みたいな関係だっていうところが難しい部分だなって感じていたので。そこを突破して、ビジネスとして成功されているヘラルボニーさんが憧れの存在だったので。いまもすごく緊張しています。 《松田文登さん》 ありがとうございます。なにかやるときに“なんでそれは、あなたがやる必要性があるのか?”みたいなものを突き詰めて考えていくと、すごく〔いいと思います〕。結局、今日〔の講演会での〕プレゼンとかピッチとか、会社を立ち上げると、そういうものをしゃべっていく側になる。そうなったときに、まず共感がないと。共感とか、そこに対して“共創したい”って思わせる引力を働かせないと、広がっていかないので。“なぜあなたがそれをやるのか?”っていうことを突き詰めたモデルになっていれば、結果、ついて来る人たちはいると思います。 #02 誰を幸せにしたいのかを考える/企業のコア・メッセージを社会に発信 《学生・松田拓也》 さきほど〔ご講演のあとに〕起業部の話をちょっとさせていただいて。〔私は〕SIAC(Social Innovation Accelerator College)ってところに参加しています。〔その経験から〕経済的価値を生み出すのがすごく難しいなって感じています。それで、いちばん聞きたいのが「なぜその地でやるのか?」っていうことと、「実践の一歩目」っていうところを聞いてみたいです。 《松田文登さん》 「その地で」っていうのは、岩手でっていうことですか? 《学生・松田》 そうです、岩手で。 《松田文登さん》 それはかなりシンプルで。誰を幸せにしたいのかと考えていったときに“やっぱり自分の兄を幸せにしたい”。その割合を増やす場所をどこにしたいかって考えていくと、やっぱり岩手で、〔障害のある〕自分の兄が豊かに暮らしていく社会を実現したいっていうのがいちばん優先順位が高いんです。 ヘラルボニーって、全国の認知度調査をやったときに、全国的には認知度あんまり高くない。だけど、岩手県内においてはパタゴニアとかモンベルより高いんですよ。ヘラルボニーのことを岩手の人は、けっこう知ってくれている状態。それは岩手のメディアにたくさん出ているので。なので、局地的に変えられるっていうものが存在していると思うんです。 なにを達成目的にするのかによって、大きく答えは変わるかなって思います。これがAI(人工知能)やSaaS(Software as a Service)、DAO(分散型自律組織)とかだったら地域でやる必要性ないと思う。まぁ地域で、DAOで解決するのはありうる。そのエリアのロールモデルを1個つくって、それを横展開したいんだったら、地方でやってもいいと思うんです。なので、なにを目的地にするのかによって大幅に変わっていくような気がする。わたしたちにおいては、兄の幸せをそこで創って、その認知を創っていくっていうのがすごく重要度高かったので、そうしたっていう感じでした。 《学生・松田》 重ねて質問です。企業が継続していくためにはやっぱりコアなファンっていうか、継続的にお金を出してくれるような人が必要だと思うんです。その、ファンづくりっていうところで、なにか工夫したところとか? 《松田文登さん》 いっぱいあるんですが、ひとつ選ぶとしたら、やはり意見広告。1年に1回か2回ぐらいは、自分たちの大切にしているコア・メッセージを〔社会に向けて〕ちゃんと伝える。ニュースにあわせてやるというのは大事にしています。きょう〔講演会で〕プレゼンした「#『障害者』という言葉」とか、シュレッダーにかけるっていうものとか。あれはやはり、誰に向いている〔意見広告〕かっていうと、当事者であったり親御さんであったり、いろんな人たちが、それがあることによって共鳴する人たちが出てくるし、それに対して共鳴しない人たちも出てくる。それを自分たちとして強烈にちゃんと自覚することができるプロセスにもなるし。それが結果として、ユーザーが、ファン層が増えていく行為につながるので。 たとえばあの広告を、超大手の広告代理店や総合商社などが発信すると炎上すると思うんですよ。それは会社の理念がそこに向いてないから。それと一緒で、「なにをやりたいのか」っていうことと、そこに対して「一貫性が伴っている」っていえることが、結果的にファンを掴むことに繋がると思う。いちばん重要なのは、そこのコアを「どこを目指すの?」っていうことで、そういう広告に真っ向から挑戦していくのはすごく重要度が高いと思ってます。能登半島地震のときも「#障害者を消さない」っていう広告を出したり。ヘラルボニーは、意見広告で世の中にさまざまな問いかけをしています。 #03 仲間と腹を割って言い合える環境をつくる 《学生・佐藤理枝》 松田さんの起業と、自分の部活のあり方に、なにか共通点や、これからのヒントを得られると思って講演会に参加しました。 わたしはいま部活でキャプテンをしていて、去年の8月から新体制になって、さらに高いレベルを目指すようになりました。いま、新しく始めたことを定着させることがとても難しく感じています。起業をはじめた松田さんは、障害のある方のイメージをネガティヴからポジティヴに変えたり、そういう活動をしていて、最初にとくに力を入れたこととか、まわりに信頼を得られるためにしたことはなにか、お聞きしたいです。 《松田文登さん》 たしかに難しいですね。難しいなあ。――いま〔ヘラルボニーの〕従業員数って80人を超えてるぐらいなんです、正社員で。いちばん最初の15人ぐらいまでは、リファラルというか、あえて採用応募を出さずに“自分たちとして働きたい”みたいな人と働くところからスタートしているんです。なので、ヘラルボニーに共鳴しているのはもちろん重要なんですけど、「この人とやりたい」って、すごく口説いていったなぁ。 わたしたちって月に1回、経営会議みたいなのをやってるんです。経営会議で、むかう方向性とか、登り方とか、伝え方、伝わり方みたいなものを全部ボードにまとめていく。で、言いたいこともちゃんと言える状態をつくっていく。腹を割って言い合える環境をどこかで整えて、それを部活の場所でやるんじゃなくて、もうちょっと心理的な安全性があるエリアで構築してやるとか。そうするとこう、一致していくみたいなものはあるんじゃないかな、うん。大変ですよね。でも、なにがいちばん大変なんですか? 《学生・佐藤》 いま〔わたしは〕まだ2年生で。上にも先輩がいるなかで、上も下もいるなかで。今回の春リーグも優勝できて、期待が高まってる分、プレッシャーもすごいかかっていて。 《松田文登さん》 優勝、すごい! 本当に、応援するしかないです。でもその「思いがあるんだよ」っていうことを伝えるだけで違うんじゃないんですか。最近のリーダーシップって、昔みたいに昭和的にこう、「これだー!」っていうのよりかは、自分の辛さとか、弱さとか、そういうのもひっくるめて出しちゃうリーダーシップのほうが、むしろついてくる人たちのほうが多いと思う。そういうリーダーシップを自分でやっていいんだって思えることも、けっこう大きいんじゃないかな。わたしもだいぶ、弱み、辛み、いっぱいあるので。出しまくっているかんじなので、はい。 #04 兄の幸せを自分たちの手でつくっていきたいという願いが原点 《学生・後藤麻緒》 わたしは2つ、聞きたいことがあります。まず1つが、自分がしたいことが具体的にでも抽象的にでもあるとして、なぜ「起業する」っていう考えに至るのかが気になりました。 《松田文登さん》 もともと〔障害のある方の〕就労支援施設、福祉施設を立ち上げたいって高校の頃から思っていたので。それはやっぱり、兄との、自分がちゃんと納得いくようなパターンを作りたいなぁと思っていたんだと思います。それを自分たちの手で、幸せをつくっていきたいって思っていたからだと思いますね。それがどういう経緯だったのかはちょっと覚えてないんですけど、ただ、そういう原点があるからやるっていうことだと思う。そもそも、こういうビジネスモデルも、わたし父親が銀行員なので、もう反対も反対だった。こういうモデルを最初スタートするときに、「どうやっておカネ借りるんだ?」っていうところからスタートして、いや、なんとかなるだろうと思ったら、本当に最初、借りられなくて大変だった。そこで、自宅の一室からスタートしたんです。 でも、そのぐらい「やりたい」っていう思いがあるものじゃないと続かないですよ。続かないっていうのは、ノリでどんどんチャレンジしていくのは大賛成なんですけど、本当にそれを仕事にしていって成長させていくって考えたら、やっぱり、なにかがないと続かない。そこに対して自分のフックがなにかないと、頑張りのときの力点が働かないんじゃないかな。 《学生・後藤》 もうひとつの質問は、わたしの話なんですけど、自分のしたいことがいろいろありすぎて決まらないっていうか。どうしてもやりたいって思うことを見つけるにはどうしたらいいと思いますか? 《松田文登さん》 難しいなぁ……。どう思いますか、先生は? 《教員・熊沢》 わたしが知っている学生の頃の松田さんは、起業するなんてまったくそういう雰囲気がある学生ではなかったじゃないですか。どこで、起業しようっていうふうに、具体的に、思いを定めたのでしょうか。卒業したときはまったく別のところへ就職されてましたよね。在学中はまだ、起業するつもりはなかったんでしょうか? 《松田文登さん》 高校〔時代〕、どこかで福祉でやりたいっていうのだけ双子〔の崇弥とふたり〕で決めていたと思いますね。 《教員・熊沢》 大学を選ぶときに、そういう関係の大学を選ぼうとかっていうことを考えて選んだのでしょうか? 《松田文登さん》 ああ、たしかに。〔東北学院大学〕共生社会〔経済学科〕を選んだのは兄の影響でしたね。兄の影響で、調べて、これが合致するんじゃないかって思ったんです。 《教員・熊沢》 じゃあ将来なにかに使えるんじゃないかと? 《松田文登さん》 って思ったっていうのはあります。 《教員・熊沢》 でも就職は一般企業へ就職されて? 《松田文登さん》 そうですね。それは〔東日本大〕震災がきっかけだったんです。震災で、実際いろんな人たちと出会って、そこをチャレンジしたいなって思ったのがきっかけになってるんです。 《教員・熊沢》 そうですね。だから松田さんも、福祉のことをやりたいと思いがありつつも、震災がきっかけでゼネコンに行ったりっていうふうに。必ずしもそこにずっとこう〔一直線に〕向かってたというわけではなく。そのときはやっぱり震災関係で? 《松田文登さん》 そうですね、そこに情熱があったので。たしかに。 でもいちばん最初にヘラルボニーで成立した事業が、ゼネコンの建設現場の仮囲いをアートミュージアムにするっていうプロジェクトで。それはその、「工事成績評定」っていう評定があって、〔点数が高いと〕入札工事で優遇されやすいので、ヘラルボニーのアートを使うと1~2点、加点プログラムにしてくれるっていうのを県と働きかけていろいろ作って。それにこう、どんどんどんどん、共感以上に、現場監督側が〔関心を向けてくれた〕。予算を知ってるので「このぐらいで発注できる」っていう座組みを作って、どんどん広がったっていうのはある。なんていうんでしょう、結局、どこでなにが繋がってるかはわからん、みたいなのは実際あって。それ(=ゼネコンでの就業経験)が結果、〔ヘラルボニーでの〕仕事に繋がりました。それがないと、そもそもそんな事業やろうとすら思いつかないことなので。 与えられた環境下のなかで、どれほど一生懸命やっていく〔か。その〕結果として、それが人生のベストな選択肢に繋がってるって、自分自身が思えているかどうか。そのほうが、すごく重要度が高いんじゃないかな。なので、どんな選択であっても「わたしの選択はベストである」って自分が思える状態にしていくっていうことなんじゃないかなって思いました。 #05 ブランド価値を高める仕組みの重要性 《学生・三瓶莉穂》 わたしは、アートを通じてさまざまな価値を創り出している「ヘラルボニー」っていう会社にしかない強みって、どのようなものなのかなっていうのが気になりました。 《松田文登さん》 強みは、たくさんあると思うんです。作家さんの作品がまず素敵だっていうのは、前提としてある。あと「HERALBONY Art Prize(ヘラルボニーアートプライズ)」っていう国際アートアワードを開催すると、そこにいろんな審査員の方が入ってもらって、その審査員の座組みがある。ヘラルボニーと契約したいって思ってるアーティストさんがいて、わたしたちとしても採択された人たちで契約したいって思ってる。どんどんマッチングの仕組みを作れているので、アートとしてちゃんと市場的な評価を受けられる土壌を最初の時点で作れるっていうこと。それは圧倒的な優位性があると思います。それをどう社会に打ち出していくのか、それは作家さんの思いも含めて、どう社会に伝えていくのかっていうのも含めて、全部を一貫して外に出せるので。それはたぶん他の会社だとなかなか難しいかなと思います。 やっぱりブランドの会社なので、どことでも組むわけじゃないんです。断ることのほうが実際は多くて。そうすることで本当に社会にインパクトを与えられるのかっていうものがすごく軸としてあるので、こう、真似しづらい。「どことでも使えますよ」っていうものには価値って生まれづらいと思うんです。「みんな使ってね」っていうものって価値は生まれないと思っていて。ある種絞ってるんです、わたしたちとして。ただ、そのためには販売も含めて担わなきゃいけないし、“こことやりたい”って思える状態のブランド価値を創らなきゃいけない。それがいま、でき始めているっていうところは少し〔他の会社とは〕違うのかなって思いますね。 わかりやすくいうと、エルメスのスカーフも、なんで〔みんなが〕買っているかっていったら、「エルメス」っていうブランドにお金を払ってる。そこの信用、信頼、愛着にお金を払ってる。でもエルメスのカレ(Carre)って、一人ひとり、いろんなアーティストが描いてるんですよ。たぶん、そのアーティストのことを知らずに買ってる人たちって、たくさんいる。「素敵、美しい」って。そこのブランド価値を創らないと、アーティストを知りたいっていう欲求にならない。なので、その欲求を創らせるっていうことがブランドの仕事だと思うので、そういうブランドを創り切るっていうのが強みになっていると思う。その強みはなんなのかっていうのを磨いていくことが、重要度が高いんじゃないかな。 #06 いろいろな人たちと出会えた自由な大学時代 《学生・大友唯》 わたし自身、将来、なにかしらで地域の課題を解決するビジネスをつくっていきたいなって思ってるんです。松田さんは高校時代から福祉施設をつくりたいって考えてらっしゃった。大学で、資格とかスキルとか、どのようなものを身につけたのかなっていうのと、「一緒に働きたい」と思える人の特徴をお聞きしたいです。 《松田文登さん》 ああ、たしかに。でも双子でやってきたので、わたしたちの強みって、大学卒業のときも、わたしの大学の友人とこっち(=崇弥)の大学の友人で、一緒に卒業旅行に行くみたいな、〔人間関係が〕2倍広がったりとか。実際、共生社会〔経済学科〕でやってることといったらちょっと少ないんですけど、たとえばクラブでファッションのイベントを主催したりとか、そういうのはガンガンやっていたんですよ。 《教員・熊沢》 そうですよね(笑)。 《松田文登さん》 ちょっと大学とはまた別の部分で、イベントとかにすごく傾倒していた。いろんなことにチャレンジしてたなあって思ってて。ひとりで東南アジアに行ったりとか。世界一周旅行した人と泉区の「すき家」で出会って、その人に感化されて、その人を1週間、家に泊めるみたいな謎の機会もあって。そこで感化されて、自分もアジアを旅しようって思ってアルバイトとか一生懸命やってた。なので、どこでなにが繋がるかはわからないと思うので、その、大学のことでチャレンジしたいことがあるんだったら、それはやればいいし。大学外のところで、自分がやりたいことがあるんだったら、それに全力でベットしていけばいいと思う。そうしたら結果として、自分のやりたいことに繋がってるって思えているかどうかなんじゃないかな。 《教員・熊沢》 大学で人とたくさん交流できたとか、なんかちょっと、大学のいいところを挙げてほしかったです(笑)。 《松田文登さん》 いやいや、大学にはたくさん〔いいところ〕ありましたよ。大学〔時代の〕友達たちも〔きょうの講演に〕聞きに来てくれて。あと、ファッション系の人たちとの出会いはいっぱいありました。いま、大田〔雄之介〕っていううちのメンバーも東北学院大学の出身です。最初のスタートが、わたしの双子の崇弥の大学時代の親友2人と、わたしの大学時代の親友2人で起業してるんです。そこからどんどん会社が〔成長して〕、いろんなチャレンジできるようになったので、そういう出会いはすごくよかったなと思います。その大田っていう者は、フィリピンに語学留学に行ったり、大学時代に一緒にヒッチハイクやったりとか。そういう出会いを求めるには最高の大学ですよね。こうまとめちゃうとあれなんですけど(笑)。いや、ほんとに。そういう最高の大学。自由に。 《教員・熊沢》 そうですよね。自由で、いろいろな人がいますからね。 #07 20代での挑戦が人生に効いてくる 《学生・大藏のどか》 ご講演の最初のほう、モニターに「自由を肯定し、突破する力」って書いていたのがすごい印象に残ってるんです。わたしは自分のことを肯定するのがすごく苦手なんですけど、どうしたら自由を肯定することができるのかなって。ポイントとかコツとかをお聞きしたいなぁと思うんです。 《松田文登さん》 難しいなあ。でもいつも意識してるのは、起業していくなかで、本当に大変なときってけっこうあるんですけど、“将来これはネタになる”って思うマインドをもっておくのは意外と大事かもしれない。もちろん、ネタにならないような、とてつもなく大変な部分はいっぱいあると思うんですけど。自分の心の中でどこかの余白を、みずから確保しておこうっていうマインドをもっておくだけでも違うんじゃないかなぁと思いますね。だって応援してくれてる人たち、たくさんいますよね? 《学生・大藏》 はい、います。 《松田文登さん》 そうですよね。で、「すごく好きだ」って言ってくれている人たちもたくさんいると思うので、その人たちにgiveしていって、相手もgiveして……を繰り返していけば、そうなっていく可能性が高まるんじゃないかな。たしかに「自由を肯定」、難しいですよね。 《教員・熊沢》 でも松田さんはたぶん、松田さんの存在そのものが、それを体現されているんじゃないですか? 《松田文登さん》 そんなことないです。でもすごく重要ですよね。やっぱり思っているのは、“会社として圧倒的に成り立たせる”っていうことを意識としてもつかどうかは、すごく大事だと思う。本気でそれを、自分の人生を懸けてやっていくっていうベクトルになったときには、ギアを変えていく。たぶん人生って、どこかの瞬間にすごく頑張れる瞬間があると、あとあと30代40代50代に効いてくる。20代のタイミングのときに、どこかのタイミングでなにかにベットする機会があると、30代40代は、そこに圧倒的にレバレッジが効く。そのなにかが、挑戦できるなにかがあったらいい。それは全体に向けて思うことです、うん。 #08 LVMHイノベーション・アワードの受賞からパリ進出へ――目的から手立てを考える 《教員・熊沢》 もう時間になってしまいますが、どうしてもあと一言、聞いておきたいことはありますか? 《学生・松田》 最後に、ぼくは海外の販路っていうところにいま興味関心が向いているところなんです。お話にあったとおり〔ヘラルボニーでは〕こんどパリに拠点ができるとのことですので、どう海外と繋がりを作ったのか聞きたいです。 《松田文登さん》 それは本当に狙ってなんです。パリって正面から挑戦しても勝ち目がないんですよ、どう考えても。なのでLVMHのイノベーション・アワード〔を狙うの〕がいちばんの最短距離だと思ったんです。 LVMHっていう〔のは〕、ルイ・ヴィトンだったりリモワだったり、いろんな75のメゾンをもってる〔巨大複合企業グループです〕。そこ〔のアワード〕に採択を受けると、Station F(=パリにある世界最大級のスタートアップ集積施設)を無料で使えるんです。2年間、そこの人たちから思いっきりメンタリングされるんですよ、どれぐらい企業として伸ばすかっていうことの。それを取りたいって決めて。でも日本企業で採択された会社がなかったので、どうやったら採択されるのかリサーチしていったら、日本の会社から推薦状を出してもらう必要性があるってことがわかったんです。LVMHジャパンの推薦状、ロエベ・ジャパンの推薦状、ディオール・ジャパンの推薦状など。それがわかったので、そこにアプローチする方法をすごく考えて、推薦状を出してもらった。なので、箸にも棒にもかからない状態を、ちゃんと箸と棒にかかる状態にするっていう作業をしました。その作業があったから採択を受けた。 そうすると、いろんな企業と打ち合わせができるんです、興味をもってもらえるので。なので、なにをやるにしても、その目的があるんだったら、そこに対してなにがいちばんレバレッジが効いて大きく伸ばせるのかを考えること。そうすると事業が伸びやすくなるし、それは結果として、障害のある方たち、いろんな人たちの幸せの総数が増えるってことだと思う。そうなっていくっていうのをプロジェクトとしてやればいいんじゃないかな。 《教員・熊沢》 せっかくの機会なのですが、もう時間がなくて、残念です。本当にありがとうございました。(拍手) 地域総合学部 地域総合学部 学部案内 地域コミュニティ学科 政策デザイン学科 関連ページ 就職データ 入学者選抜 本学で取得可能な資格