『被災学』創刊にあたって
東日本大震災発災の翌年となる2012年7月20日、本書の前身『震災学』が創刊され、これまで17号を発刊するに至りました。『震災学』では、研究者だけなく震災と関わった多様な関係者の目線を通し、東日本大震災によって発せられることのなかった人々の声を丁寧に掘り起こすことで、不断の営みを続けることが如何に難しく、如何にして刹那に失われてしまうのかという点について考えてきました。
東日本大震災以降、我が国では多種多様な自然災害が発生しています。また、少し目を広げれば、世界では自然災害だけではなく、戦禍という愚かな人災も発生しています。『震災学』では、日々、何処かで失われている不断の営みについて充分に熟思できていたでしょうか。
この問いに対する応答として、本書『被災学』を創刊いたします。感情のみ想起させる記事を、その応答にしたくはありません。尋常一様であるべき不断の営みの大切さや儚さに対する理解を核とし、被災のメカニズムや被害、被災からの復興、被災によって失われる声、被災によって溢れ出る感情など、各号に不抜の意思となるテーマを設け、いつか被災を経験する人、これまでに被災を経験した人、このような人たちにとっての知識、闇夜のともし火となるような書籍としていきます。