先生の本棚

本図書館で定期的に発行している”Library Information”では、「先生の本棚」というコーナーを設けて、4人の先生方に1冊ずつ本の紹介をしていただいてます。

ここではLibrary Informationの125号(2023年9月29日発行)に掲載された4人の先生方の本を紹介します。それ以前の「先生の本棚」はこちらのページにあるLibrary Informationのバックナンバーの最終ページをご覧ください。

教養教育センター教授 信太 光郎

『ミドルマーチ』ジョージ・エリオット著、廣野由美子訳、光文社古典新訳文庫、2019

作者のジョージ・エリオットは、ダーウィンの同時代人であり、ハーバート・スペンサーとも交際があった。革新的な進化理論が生み出された19世紀イギリスの時代精神が、この作品の底にも流れている気がする。主人公の一人ドロシアは、理想にもえた結婚生活に失望したかと思えば、恋人の裏切りへの絶望のなか保った分別から幸福を掴み取る。

結局ドロシアは、聖女にも悲劇の主人公にもなれない人生を送ったのだが、しかし、そうした無名な人々の「生きよう」とする姿勢そのものが、人間世界をより良きものにしていくのだと作者は考えている。これはダーウィンが、大小問わず個々の生き物の生存への努力こそが、生物界全体の進化の原動力であるのを見出したことと通じているように思われる。

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経営学部・経営学科 松村 尚彦 先生

『力と交換様式』柄谷行人著 岩波書店2022年

資本主義は、経済的な格差、気候変動、人間の孤独など深刻な問題を引き起こしている。こうした資本の力に対抗するために、様々な社会運動が繰り広げられてきたが、今に至るまでその破壊的な力は止まることがない。

著者である柄谷氏は、マルクスの『資本論』を独自の視点から解釈し直すことによって、資本主義の弊害を乗り越える新しい社会が、人間の努力によるのではなく、「人間の意志を超えて働く力が『向こうからくる』ことによって出現する」のだと主張する。

柄谷氏は、マルクスの思想に対するラディカルな再解釈が評価され、2023年4月に哲学のノーベル賞と呼ばれるバーグルエン賞を受賞した。

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国際学部国際教養学科 松谷 基和先生

『核戦争の瀬戸際で』ウィリアム・J・ペリー著、松谷基和訳 東京堂出版 2018年

2022年2月に開始されたロシアによるウクライナ侵攻は、深刻化の一途を辿り、核戦争の可能性まで囁かれている。

著者のペリーは1990年代に米国国防長官としてウクライナに配備された旧ソ連の核兵器の廃絶をロシア・ウクライナの国防当局との協調の末に成し遂げた人物である。この経験をもとに彼は一貫して米国が核大国ロシアを重視した慎重かつ包容的な外交政策・核政策の重要性を唱えてきた。

本書を読み直せば、彼の警告を無視した米国の政策が今回の危機の伏線にあることが一段と明瞭になる。

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地域総合学部地域コミュニティ学科 目代 邦康

『大地の動きをさぐる』 杉村 新著,岩波現代文庫,2023

日本でしばしば発生する地震は,地球の表面を覆うプレートの活動によるものです。その研究は,日本では1970年代以降に進みます。その知見はプレートテクトニクスとしてまとめられ,現代では地球を理解する根本原理の一つになっています。

この本では,地質学,地形学,地球物理学といった各分野の成果から,「大地のうごき」を,平易に解説しています。初版は1973年に出版され,その50年度の2023年には文庫版が出版されました。地球の営みの本質を示している本であるため,子供だけでなく多く専門家にも読みつがれています。

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