東北学院大学

経済学部 共生社会経済学科

2023年4月募集停止

学生募集停止する学部・学科の全ての在学生に対しては、卒業するまでは入学した学科の所属及びその教育環境を維持し、学生生活及び進路・就職支援等につきましても、教職員一同責任を果たしてまいります。

第22回
アルゼンチン
もう一つの福祉国家・ポピュリズム

2022年6月23日(木)開催

講演内容

講師:宇佐見耕一氏
(同志社大学グローバル地域文化学部教授)

アルゼンチンは、第一次世界大戦前はイギリスを中心とするヨーロッパ向け農牧産品輸出で繁栄し、南欧から多くの移民が到来した。しかし、ソサエティー(sociedad)と呼ばれる上流階級と労働者との格差は大きいままであった。第二次世界大戦後から正規労働者向けの社会保障制度の整備が始まり、それは先進国における福祉国家形成とほぼ並行しておこなわれた。その福祉国家形成大きく拘わった政権が第二次世界大戦直後に成立したラテンアメリカを代表するポピュリスト政権であるペロン政権であり、同政権期にアルゼンチンにおける福祉国家の原型が形成されたと考えられる。陸軍の右派に属したペロンが軍事政権期に労働・社会保障庁長官となり、彼の下で労働法の整備と社会保障制度の整備が始まった。労働者優遇策により、労働組合のペロン支持が拡大し、労働組合の支持を受けて1946年に大統領に勝利し、ペロン政権が成立する。同政権下で産業保護政策がとられる一方で、 労働法や社会保障政策の整備が進み、アルゼンチンの福祉国家形成は加速された。

学生の感想

①講演で一番印象に残ったことは何ですか。
  • 今回の講義で一番印象に残ったのは、アルゼンチンの社会保障に財政が追い付いていないということです。今まで、アルゼンチンは社会保障が充実していて人々の生活も豊かなイメージがあったため、財政が社会保障に追い付いていないということを知って驚きました。国民全員が社会保障を受けられることは良いことだというイメージしかありませんでした。しかし、それがアルゼンチンの社会保障に財政が追い付かず、しばしば財政破綻が起こる原因の一つになっていることを知り複雑だと感じました。また、なぜアルゼンチンは社会保障が充実しているのかについて知ることができ、とてもいい機会になりました。
  • 今回の講演で一番印象に残ったことは、労働法の整備についてである。
    労働法の整備が行われて解雇保障がつくられたことにより、正規労働者にとっては安定的な雇用の関係が築かれ、解雇されるリスクはかなり低くなった。
    しかし、解雇保障ができたことによって、労働市場へ新たに新規参入することが難しくなったことから、若者の失業率やインフォーマルセクターが増加してしまったのではないかと思った。この労働法は、正規労働者にとっては良い条件だったが、正規労働者ではない人々にとっては逆に不利になってしまう可能性のある法だったのではないかと感じた。
  • 今回の講演は世界の問題について新たに知ることが多く貴重なお話でした。現在はSDGsが世界の問題として大きく取り上げられていますが、各国ではそれぞれにそれ以上の問題を抱えている現状を認識することができました。
    アルゼンチンは農業自供率の高さや石油面でも、オーストラリアなどのように成長できる豊かさがあると感じました。この豊かさをさらに生かすためには、国内の問題を解決するしかないのではないかと考えました。経済の発展は必ずしも国民1人ひとりが豊かになるわけではなく、発展に平行した社会体制をとる必要があると思いました。社会学や福祉学の観点から見つめ直すことや国際関係学や歴史学の視点からのアプローチも求められるのではないかと考えました。
    他国の国際状況を知り、日本の状況についても共生の目線で他国との共通点や相違点について学びたいと思いました。
  • 今回の講義の中で最も印象に残っていることは、内容と少し離れていると思いますが、紹介されたスライドの中のアルゼンチンの大学の授業の様子です。学生のほとんどが欧州の人種ということで、日本人が留学した際にアジア人はその人のみだったという話を聞いてとても驚きました。このことについて気になり少し調べてみると、1861年以降の移民政策が大きくかかわっており、それ故イタリア・スペイン系が人口の97%を占める移民国家であるということも理解できました。
  • 私は、アルゼンチンが農業に強い国であるにもかかわらず、国の中で貧困層に食料を分配することができていないことが印象に残った。一般的に考えれば、自国で作った食料を国民に消費させることが多いが、農業に強いにもかかわらず、貧困層に食料を分配できていないことが矛盾していると感じた。また、アフリカと違い、アルゼンチンは1人当たりのGDPが高く、援助を受けることができないことも、貧困を救うための援助であるにもかかわらず、うまく制度が機能していないと感じた。日本が問題にしていることとアルゼンチンが問題にしていることに違いが見られ、普段の日本の問題とは違った考え方が求められる難しさを考えさせられた。
②講演を聞いて考えたことを自由に書いてください。
  • 少し難しかったが、最後に話していた日本のアルゼンチン化という部分に興味が湧きました。アルゼンチンは日本のように人口は減少していないが 財政赤字になり人々の格差が激しいとわかりました。日本も今はまだ、ギリギリの生活をしていますが 30年後、40年後はわかりません。
    これから先の自分の生活にも危機が迫っていることを感じ、私でもできるなにかを模索し始めたいです。
  • アルゼンチンが衰退した理由を考えてみると、ポピュリズムが原因だと思いますが、他にも様々な要因があるのではないかと考えてみました。ことの発端は資本と輸入を自由化させたことでした。これらが外債を増やし、450億ドルまで増えてしまいました。それを行ったのは軍事政権でした。調べてみるとその解決策として、労働組合を弾圧したり、アルゼンチンでのワールドカップを賄賂を使って自国開催するなどしましたが、失敗しました。ファンペロンが作り上げてきたものを壊してしまった軍事政権が原因であることがわかりました。
  • 私は、アルゼンチンという国についてどこにあるかということぐらいしか知らなかったが、今回の公演を通じてこれまでどのように国による支援などが行われてきたかということが分かった。アルゼンチンがファシズムだったということも初めて知り意外だった。また、アルゼンチンの国としての考え方が、家族主義と補完性原理という点で日本と非常に似ていると感じた。何年か前に、日本のアルゼンチン化を危惧していた人がいたということにも驚いた。日本はGDPが中国に追い越されるなど経済面が厳しくなってきている。もし、日本が今の状態から脱却するなら、似た状況に置かれているアルゼンチンを参考にすると打開策が見つかるかも知れないと思った。
  • アルゼンチンで政権崩壊や経済危機が何度も起こっているのに、国民が餓死するなどの状況にならないのは、アルゼンチンというある程度国土が大きく、資源が豊富な場所であるからだと考えた。もし日本がアルゼンチンと同じような状況に陥ってしまったら、立て直すのは相当難しいだろうと思った。私が経済面から考えたのは、需要と供給の国内、地域内循環を確保することが大切だと思った。市場と技術開発を継続的に更新していけばある程度安定した基盤が築けるのではと考えた。
  • 私が知らないだけで、世界には様々な政治のあり方があることを知った。経済学部として知っておくべきことも沢山あり、知っていく必要がある内容であった。日本と世界を比べることによって新たな発見が見つかると思ったので、さらに学んでいきたい。