東北学院大学

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学長の部屋

大学卒業式告辞

平成26年度 東北学院大学卒業式告辞

本日ここに東北学院大学を卒業なさる皆さん、まずもって「ご入学おめでとう」、と申し上げます。その上で、あわせて「ご卒業おめでとうございます。」

皆さんの多くは、私たち日本人が決して忘れることの出来ない、2011年3月11日の大震災の時に、高校を卒業され、東北学院大学への準備を始めようとされておられたのだと思います。アルバイト中の方、あるいは旅行中の方があったかもしれません。そのようなときにあの大きな地震を体験されたはずです。ご自身や家族、お知り合いが津波のために被害を受けた方も少なくなかったでしょう。

東北学院大学も被害を受けました。特に工学部以外の1年生が学ぶ泉キャンパスの建物の損壊は大きなものでした。工学部のある多賀城キャンパスでは礼拝堂を被災者の避難所に提供しました。そのような厳しい状況で、私たちは皆さん方のための入学式を例年通り挙行は出来ないと思い、式の中止を決め、授業開始は建物の一応の修理が整う、5月連休明けとしたのです。

そういうわけで、皆さんには、一堂に会して入学のお祝いを申し上げることができませんでした。

皆さんはこのように、非常時的な新入生時代をスタートせざるを得ませんでした。けれどよくそれを耐え、学期進行が遅れないように大学が設けた、夏休みなどの短縮、タイトな授業スケジュールに対応してくれました。しかし秋にはほとんどの建物設備が復旧し、本来のキャンパスライフを過ごせるようになったと思います。

大震災直後から東北学院大学では、学生たちを先頭に被災した各地に出かけ、復興の支援に励むボランティア活動が生まれました。大学はこれら活動を組織的円滑に行えるよう、ボランティアステーションを立ち上げ、日本全国の大学生たちからの参加要請のお世話をするようになったのですが、皆さんの中にも、ボランティアとしてこのプロジェクトに関わった方が多くおられたでしょう。

この災害から4年を経過しました。東北学院のボランティアは今も全国とつながって、協力しつつ気仙沼や南三陸、また仙台の被災者住宅への支援を続けています。この3月14日から仙台市で国連防災世界会議が開かれたことは記憶に新しいところですが、その一環として開かれた一連のシンポジウムで、本学学生たちが活動の報告を行いました。この場におられる方で、それらシンポジウムに参加した方々もあるでしょう。

「地の塩、世の光」という、皆さんもよく耳にした本学のスクールモットーが、ボランティア活動を通して実行されたわけです。大震災は深い傷跡を残しましたが、日本人の支え合う心と力への気づき、をもまた印象づけてくれたと言えるかもしれません。

東北学院大学で学んだ4年間のことが、今皆さんの脳裏に想起されていることと思います。皆さんは本学の6つの学部、7つの研究科で学ばれ、卒業と修了を認定され、学士号、修士号を獲得して旅だってゆかれます。それが大学が皆さんのためにお渡しする証明、ディプローマです。分野は様々ですが、それぞれの分野の専門的知識とその学問の手法を皆さんは身につけたわけです。学んだ授業のタイプは講義、演習、と様々だったと思います。フィールドワークやゼミレポート、卒業論文では、単に教えられるだけではなく、皆さん自身が自主的に、自己の判断で問題を発見し、調査し、発表の言葉や論文を構想し表現することが求められ、あるいは苦しみつつも、大学で学び、鍛えられ、達成する、という喜びを実感されたと思います。また、教育実習とかインターンシップとか、あるいは先ほど触れた被災地ボランティアなど、大学の外に出て、社会の問題と向き合う機会も少なくなかったでしょう。それらは特に良い経験となったことと思います。

これらの大学の学びの蓄積が、今日これから皆さんが出て行かれる、仙台の、東北のあるいは日本全体、そして世界各国の、まさに現場で働いてゆく上で、必ず大きな武器となるのです。山ほどある課題を与えられ、あるいは課題そのものを見つけ出すことを求められ、それらを解決することが不可避となります。大学で得たノウハウが役立たないほどに問題は難しくなるかも知れません。そのような場合の応用力、ひらめきを感じる力は、大学で得たことを皆さんが我がものとし、それらを磨き上げることによって獲得されるはずです。

中等教育学校から始まった東北学院が最初の学院卒業生を送り出したときから数えて、すべての卒業生は17万人を超えます。その卒業生、TG同窓生の大きな群れに、新しく約3000名の諸君が、今日加えられることとなります。まことに力強い群れであります。東北学院として、大変誇らしく思うものです。

東北学院で学ばれ、キリスト教と聖書に触れた皆さんは、いかなる苦難を経験するときも、キリストが私たちと共にいてくださる、ということを、感じられたと私は信じています。

聖書は、「苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生む。希望が失望に終わることはない」、と語ります。現状はなお忍耐を要する事柄が山積していても、希望は失われることがないのです。それを東北学院を卒業してゆかれる皆さんには知っていただきたいのです。

さて、現在の日本と世界の現況をみるにつけ、皆さんが直面する状況には大変厳しいものがあると言わざるを得ません。

民族と国家の間に平和な状態が保たれなくなっています。先進国と発展途上国の対立に宗教対立が絡み合う、深刻な亀裂があります。世界秩序からはみ出た過激な集団によって日本人何人もが犠牲となりました。社会経済的には先進国に大資本と中小企業の格差の拡大、労働者の間の正規と非正規の差別化があり、貧しさの問題は、アフリカ、アジアの多くの国々でいっそう深刻です。政治家は理想も哲学も語らなくなり、経済的利益と効率、軍事に支えられた国家愛にのみ興味を持つかのようです。そして、インターネットと先端科学の進歩が、人間関係や倫理において受け止められないほどに肥大し、想定外の犯罪や摩擦を生み、上に述べた差別や貧しさ、暴力などの更なる深刻化を招いています。もちろん科学の進歩がガンの脅威を和らげ、生活が様々なツールで便利になり、新たな企業チャンスが生まれる、などの明るい話題もあります。

しかし、皆さんだけでなく、すべての人類が、よほど目を開き、知恵を総動員して立ち向かわなければならないほどに、危機は大きくなっているのです。それが現代なのです。大学卒業は、業を終えることではなく、新たな階段への踏み出しです。

けれど、「希望は失望に終わらない」のです。「神は耐えられないような試練を与えることはなさらない」、とも聖書は教えます。東北学院を巣立つ皆さんにはこれは特に力強い支えです。身につけた専門的知識、そして聖書の言葉が、よく生きよう、隣人を愛し、地の塩として、世の光として、世界を正しい方向へとみちびくよう働こう、と決意する皆さんのいついかなるときにも確かなよりどころとなるでしょう。

厳しい社会へと旅だってゆかれる皆さんの、力強いあゆみと明るい未来が開かれることを確信して、告辞といたします。

ご卒業おめでとうございます。

2015年3月24日

東北学院大学学長 松本宣郎