東北学院大学

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学長の部屋

大学卒業式告辞

平成28年度 東北学院大学卒業式告辞

本日ここに東北学院大学を卒業、修了なさる2,641名の皆さん、ご卒業、修了、おめでとうございます。

東北学院大学で学んだ4年間あるいは大学院を加えると6年間の様々な思い出が、今皆さんの脳裏に想起されていることと思います。学部卒業の皆さんの多くは、2011年3月11日の大震災の2年後、大学院修了の皆さんはまさにその年かその前に本学に入学されたと思います。震災の心の痛みや経済上の不安を感じ、復興途上の町々の風景を目の当たりにすることも少なくなかったでしょう。

そのような中、皆さんは本学の6つの学部、6つの研究科で学ばれ、今日学士号、修士号、博士号を獲得して旅だってゆかれます。分野は様々ですが、それぞれの学問の専門的知識とその研究手法を皆さんは身につけたわけです。

学んだ授業のタイプは講義、演習、と様々だったと思います。フィールドワークやゼミのプレゼンで鍛えられたことは特に印象に残っていることでしょう。大学としても皆さんの在学中、教育方法の改革を積極的に行ったつもりです。単に教えられるだけではなく、皆さん自身が自主的に、自己の判断で問題を発見し、調査し、発表の言葉や論文を構想し表現することが求められる、アクティブラーニングの新しい授業スタイルが取り入れられたと思います。土樋キャンパスで学んだ皆さんは、最後の年度に、新築された「ホーイ記念館」でインターネット設備の整ったラーニングコモンズを活用し、あるいは、パン屋さんでサンドイッチを食べる機会もあったことでしょう。

よき人々との出会いがたくさんあっただろうと思います。授業を共にするだけでなく、一緒に飲み、スポーツし、自分の理想や悩みを語り合う友、とことんまで卒業論文の作成につきあってくださった先生、これらの方々とは生涯つきあってください。

けれども皆さんが出て行くのは不透明で不安も多い社会です。具体例を挙げればきりがありません。戦争が続いている国は少なくありません。ISのような国際的に破壊をおし進めようとする組織があります。自分の国、というより、自分自身の利益あるいは見栄のためにことさら攻撃的な姿勢をとる国家指導者がいます。対立が戦争を招き、犠牲となる人々が国を追われています。そのようにして生まれた難民たちを迷惑だととらえ、排斥する勢力が、これまで民主主義を唱えて世界をリードしてきたはずのヨーロッパ諸国でも力を得、国を分断しつつあります。

人間にとって最も大切な「幸せ」が世界の人々の間に公平に存在しなくなっているように思われます。「幸せ」はもちろん富の豊かさだけで得られるものではありませんが、富は大事な要素ではあるでしょう。その富が地球的規模でかたよってしまっているのです。かつてはきわめて不十分ではあれ、富が分散されるシステムがあって、富者と貧者の格差は今ほどひどくはなかった、少なくともひどくない世界もあった。それが今は格差が広がり続け、それを止めようとする力が放棄されているかのようです。そして富んだ者はそれを離したがらず、益々増やそうとし、貧しい者は飢えるか、富者から奪い取ろうと憎しみを燃やす。そのような構造が出来上がってしまっている。

一方で科学の進歩、つまりIT革命というべき現象が人間の生活をすっかり変えてしまっています。まだ若い皆さんですら、10年前の子どもの頃とくらべて、スマホやPCに侵食されて、すっかり異なる生活スタイルになってしまっていることに気づくのではないでしょうか。社会や経済の構造においても同様のことがすさまじいスケールとスピードで進んでいるのです。今ある職業のうち60%は、三十年経たないうちに消滅してしまう、と言われているほどです。このような状況が進むとなりますと、人間の生活だけではなく、精神的なものも変わらざるを得ないということです。

そのような社会に皆さんは踏み出してゆかれます。変化に賢明に対応し、変わってはならないものを見出して大切に守り、正しく決断し、生き抜いてください。どうか自分の力に自信を持ってください。このような現代社会を生き抜いてゆく基礎能力を、皆さんは東北学院大学での学びの中で身につけているのです。仮に大学での学びの分野とは異なる仕事に就くことになっても、TGベーシックで汎用的な教養教育と基礎的社会能力を身につけておられる皆さんには、すぐれた適用性が備わっているのです。

中等教育学校から始まった東北学院が130周年を経て、最初の学院卒業生を送り出したときから数えて、すべての卒業生は18万人を超えます。その卒業生、TG同窓生の大きな群れに、新しく今日、2,641名の諸君が加えられることとなります。卒業式に続いて、同窓会の入会式が予定されています。先輩方は仙台を中心に各地域社会に深く広く根を張って働き、貢献し、同窓会の絆をも張り巡らしています。TG卒業生は能力的にも人格的にも社会から高く評価され、受け入れられています。その先輩方の力はきっと新社会人となる皆さんの支えとなってくれるでしょう。

さて、先ほど申しました大きな課題に直面する皆さんは、世界の悲惨な状況にある人々に手をさしのべてください。戦争と人権の弾圧を目指す勢力を批判してください。

東北学院で学ばれ、キリスト教と聖書に触れた皆さんは、いかなる苦難を経験するときも、キリストが私たちと共にいてくださる、ということを、感じておられると私は信じています。

聖書は、「苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生む。希望が失望に終わることはない」、と語ります。現状の世界はなお忍耐を要する事柄が山積していても、希望は失われることがないのです。それを東北学院大学を卒業してゆかれる皆さんには知っていただきたいのです。

身につけた専門的知識、そして聖書の言葉は、いついかなるときにも、よく生きよう、隣人を愛し、地の塩、世の光として、世界を正しい方向へ向けてゆこう、と決意する皆さんの確かなよりどころとなるでしょう。

今日、旅だってゆかれる皆さんの、力強いあゆみと明るい未来が開かれることを確信して、告辞といたします。

ご卒業本当におめでとうございます。

2017年3月23日

東北学院大学学長 松本宣郎