東北学院大学

法学部

翻訳書『グローバル開発史-もう一つの冷戦』が公刊されました

2022年06月23日

 この一年ほど翻訳の仕事に取り組んできたのですが、その成果を『グローバル開発史-もう一つの冷戦』(名古屋大学出版会)として公刊できました。これは、イタリアのトレント大学のサラ・ロレンツィーニ教授が書かれた、開発をめぐる国際関係史の書物です。オリジナルは2019年に公刊されました。ヨーロッパのある研究者は、本書を「歴史家によって書かれ、オリジナルの公文書調査に基づいた開発史の最初の包括的な概説書」と評しています。内容については、All Reviewsの記事も併せて見てください。

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※出版社の紹介サイトはこちら

 
 この本が誕生した「裏話」をお話ししますと、これは「コロナの産物」です。以前の法学部ブログに書いたように、コロナの世界的な広がりのなかで、海外での史料調査ができなくなり、私も研究スタイルの変更を余儀なくされました。このなかで強く意識したのは、①世界の研究動向を意識しつつ、②これまでの自分の研究を見つめ直し、③日本にいても可能なことを探す、ということでした。そしてその具体的作業の一つとしたのが、本書の翻訳でした。

 本の選定にあたっては、私の専門性から「目が利く」ものであることはもちろんですが、以下の条件も判断材料にしました。①海外ですでに高い評価を得ていること、②日本において類書が無く、今後、当該研究領域の必読文献になりそうなこと、③内容的に、政治学だけでなく、法学、経済学、歴史学、国際関係学、環境学、開発学など、様々な領域の専門家にも関心を持って貰えそうなこと、です。

 作業は2021年の春(2020年度の秋学期終了後くらい)から始め、同年の夏休み明け頃に一通りの訳出を終えました。ただこの仮訳の段階では、まだ世に問えるレベルではなかったので、西南学院大学の山本健先生にも作業に加わっていただきました。本書が読みやすいものになったのは、山本先生のおかげです。修正作業は、その後、冬休みも春休みも無く続けられ、出版社の非常に優秀な担当者に助けられながら、今年のゴールデンウィーク明けになんとか完成できました。

 価格設定についても、出版助成がないにも関わらず、出版社がかなり頑張ってくれました。ハードカバーでありながら3400円です。感謝しかありません。素晴らしい本ですので、ぜひ多くの人にお手にとって貰えればと思います。本書が描くスケールの大きな物語や、それを裏付ける著者の博識に圧倒されることでしょう。長く読み継がれることを願っています。

法学部教員 三須拓也

【関連リンク先】All Reviewsの記事(日本語)
        プリンストン大学出版のHP情報(英語)