東北学院大学

法学部

「18歳成人」とお金・その4(不法行為(名誉毀損))

2022年09月05日

 引き続き、受講生の「感想」を紹介します。今回は若者の行う違法行為(不法行為)をテーマにしました。
 不法行為は18歳成人と関係のないテーマですが、前回触れた、詐欺的投資勧誘で“加害者”になる若者がいることも考えると、早めに知っておいて欲しい法知識です。不法行為もいろいろありますが、若者にとって身近な危険になっている「名誉毀損」を題材に、加害者として報道されることの意味、インターネットの役割や利用法もあわせて考えてもらうことにしました。
 
 そんなことを目指したE班の課題判例は、Googleの検索結果に残る逮捕歴の削除の可否(「忘れられる権利」の有無)が問われた、最判平29.1.31民集71-1-63です。

問い
 インターネットを介して「世界」につながることで、人々は、比較的容易に違法な活動をしたり、違法な活動の被害に遭ったりするようにもなりました。特にインターネットの情報発信力は、名誉毀損や侮辱などにあたる行為を容易にするとともに、その被害を拡大させる要因となっています。
 また、インターネットで収集・拡散された情報が長期にわたって情報空間に残り、それが検索されることにより、プライバシー侵害の危険も増しました。
 これらの危険は、社会的に守られているはずのこども・若者でも同様です。他の年代より利用度が高い分、一層深刻かもしれません。
 
 名誉毀損や「忘れられる権利」が問題となった裁判例について学び、あなたは「名誉毀損に関する法規制と表現の自由の関係」と「若者の加害・被害をどうやって防止すればいいのか」について、どう感じましたか。

 

・「名誉毀損に関する法規制と表現の自由の関係」について、個人情報は慎重に取り扱う必要があると考える。なぜなら、個人情報が公に漏れてしまったら、その人の表現の自由が奪われてしまうからである。また、「若者の加害・被害をどうやって防止すればいいのか」については、被害者が我慢するしかないと考える。それは上記に記したような理由であるが、やはり加害者もまた被害者なのである。しかし、我慢するといっても1人で抱え込むのではなく誰かに助けを求めたり、相談したりすることが重要だと私は考える。(E.D.)

・私は今より規制を強化しても良いと思う。表現の自由は確かに守られるべきものであり法益保護の対象になる。しかし名誉毀損は別でこれが原因で自殺をしてしまう人もいる。これは自ら手は掛けてないが殺人である。そして恐ろしいのが犯人が複数人いる事である。以上から今より規制を強化して名誉毀損を厳しく罰するべきである。
 若者の基準が小学生とかであれば親が携帯を管理しインターネットの使用を制限する。中学生以上であれば見るだけにする等、投稿は控える、相手の立場になって考える事が防止策になると考える。(K.S.)

・名誉毀損に関する表現の自由については、言われた側の主観的解釈が大きく、受け取られた意味の個人差が大きいので予測や判断が難しいので、元からコメントをしなければ何の問題もないと思います。
 次に、若者の加害・被害については、軽い気持ちでネットにコメントする人が多く見られ、自分自身でやった事の犯罪意識が薄いと思うので、防止のしようがないと思います。だけど、学校などでネットの安全講座などを開くと良いかと思います。(S.S.)

・表現の自由を擁護しすぎてしまうと、名誉毀損の被害者を保護することができなくなり、規制をかけ過ぎてしまうと権利の侵害に当たるため、一定の基準を設け双方の被害の程度や、被る具体的な被害のバランスを慎重に考える必要があるのでは無いかと感じた。また、インターネットの利用率が高い若者は被害者にも加害者にもなり得るが、監視下に置きすぎると自由の侵害に該当するため、完全に防止するのは難しく、起った後の対応が重要であると感じた。(S.M.)

・名誉毀損に関する法規則と表現の自由との関係については、どちらが優先されるか一義的には決まらないが、日本では表現の自由に比べ、名誉毀損によって権利を侵害され被害を被っている者が多いように感じた。若者の加害・被害を防止するためには、若者の場合、知識がないことや、大人よりも判断力が乏しいという面で加害や被害を発生させていることが多いと感じる。そのため、しっかりとした教育を行い、知識を身につけることでこれらを防止できると考えた。(S.H.)

羽田のコメント:現状よりもう少し名誉毀損への配慮を求める感想が多く集まりましたが、発表時のE班の意見は、1名を除き、「忘れられる権利」を否定するものでした。この感想で情報拡散後の対処方法(削除)に文字数が割かれていないことに、発表時に感じられた、表現の自由をより重視する傾向が表れているかもしれない、と言ったら言い過ぎでしょうか。
 なお、Twitterにおける逮捕歴情報に関しては、最高裁で削除を認める判断がなされています(最判令4.6.24)。興味のある方はぜひ、調べてみてください。

羽田 さゆり