東北学院大学

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「難民化・ヘイトクライムから生命の非孤立化、非序列化へ―東日本大震災(3.11)・セウォル号事件(4.16)・相模原事件(7.26)後のコミュニティ」開催報告

2016年09月28日

9月17日、東北学院大学地域共生推進機構、東北大学日本思想史研究室共催による表題のフォーラムが、8号館第3・4会議室において開催されました。このプロジェクトは、「科学技術時代における新たな死生観・倫理的実践主体の創出をめぐる世代間対話」の一環として開催されたものです。

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今回のテーマは、「難民化・ヘイトクライムから生命の非孤立化、非序列化へ」と題して、東日本大震災(3.11)とセウォル号事件(4.16)、そして相模原事件(7.26)を対比しながら、国境や民族の壁を超えた紐帯の可能性を考えることを主眼としました。

朝8時30分、参加者約50名が一堂に会し、フォーラムがスタート。開会に先立ち松本宣郎学長が、昨今のヘイトスピーチ問題や相模原事件の根底にある差別意識など現代社会が抱えるひずみについて共に語り合い、考えましょうとあいさつ。続いて駐仙台大韓民国総領事館の鄭太守・副総領事から祝辞をいただき、共催である東北大学日本思想史研究室の片岡龍准教授が、上述のテーマに関して、本日参集いただいた諸先生方、そして東北大学と東北学院大学を中心とした東北圏内の大学生と共に3日間にわたり論じ合う予定であると趣旨説明を行いました。

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続いて本学共生社会経済学科の郭基煥教授(東北学院大学災害ボランティアステーション所長)が、17日のフォーラムとセミナーの内容について説明しました。

9時を少し回ったところで、一般公開と位置付けられた午前中の第一部フォーラムがスタート。特別講演として金泰昌氏(公共哲学共同研究所所長、東洋フォーラム主幹)が登壇。「まず韓・日間の‘活命連帯’を提案する」と題する講演では、日韓の歴史を踏まえ豊富な海外経験に裏打ちされた世界観と哲学思想などを語ってくれました。文字の成り立ちとその意味から金先生ならではの用語の使い方、提案などを盛り込んだ内容に参加者の約半数を占める学生たちは新たな視野が開けたかのように真剣に聞き入っていました。

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引き続き金氏の講演に応える形での「応答1」として、本学教養学部地域構想学科の大澤史伸准教授(福祉サービス論専攻)が、中央省庁に在籍しながらその職を辞して福祉の道に歩んだ経歴を含めて報告。「応答2」では福島県立特別支援学校講師で、てつがくカフェ@南相馬の辻明典氏が相模原事件やセウォル号事件などで、「死」がテレビによってライブで放送され続けたことの衝撃などをまじえて報告。一般公開の第一部を締めくくる全体討論では、2つの問いかけを受けて再び金先生が解説し、日韓古典に詳しい先生ならではのお話しで、午後からのセミナーにつなぐ余韻を残して終了した。

 午後1時から第二部がスタート。机の配置を「ロ」の字型に替え、会場全体がラウンドテーブルとなりました。着席したのは参加大学の学生、院生、研究者で、まず参加者の自己紹介でたっぷり1時間をかけての “顔合わせ”でした。午後2時からは、2名の研究者によって問題提起が行われました。最初に登壇されたのは東北大学大学院で学び、被災地でケアに取り組んでいる臨床心理士の兪幜蘭氏が「臨床心理士の現場から」と題して発表。被災者の心の支援やコミュニケーションの現場での問題点や対処法などについて語りました。続いての発表者は、第一部の講演で金先生が「私は今日のフォーラムでこの方に会うのを楽しみにしてきました」と称えた本学教養学部地域構想学科の金菱清教授。「痛みを温存する〈記録筆記法〉の実践」と題し、震災以降上梓してきた『3.11 慟哭の記録』、『震災メメントモリ 第二の津波に抗して』で実証してきた〈記録筆記法〉について解説。親しい人々を失った被災者自らが記録する、つまり生者と死者の魂が共同作業として記録するというプロセスを経ることによって気持ちが整理され、思いを温存することができるとその成果を報告しました。そこには、今年(2016年春)上梓された『呼び覚まされる霊性の震災学 3.11生と死のはざまで』の学生たちのフィールドワークにまとめられた死者の魂と向き合おうとする“霊性”に通底すると結びました。

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 一方は語りを聞くことでのセラピーを目的とした臨床心理士の立場から、対して社会学の立場から、霊性を尊び〈記録〉することで痛みを温存する手法によってケアされる…双方の相違を浮き彫りにしつつ、アプローチの違いについて考えさせられる報告となりました。

 最後の全体討論では、ラウンドテーブルから登壇者や金先生への質問が投げかけられ、当意即妙な回答を披露してくれました。

 休憩、昼休みを入れ約9時間に及んだ初日のフォーラムとセミナーは終了。ステージは二日目からの研究会へと移りました。