2016年11月09日

  　10月23日(日)午前10時から仙台市宮城野区岡田の新浜で「新浜の自然と歴史」と題した学習会が開催され、文学部歴史学科菊池慶子教授とそのゼミ生、教養学部地域構想学科平吹善彦ゼミの学生が参加しました。学習会には新浜の住民のほか、行政や貞山運河研究所、高砂町内会の関係者の方など、合わせて60名が集い、午前中は海岸部の巡見、午後からは調査報告とワークショップを行いました。学習会は２回目で、前回は教養学部平吹善彦教授による新浜の自然と生態系についての調査報告などを行っており、今回は「新浜400年の歴史と出合う」と題して、歴史の視点からの学習会となりました。　
　参加者は新浜集会所に集まり、町内会庶務遠藤源一郎さんから日程の確認などお話を頂いた後、バスで荒浜の方から迂回して新浜の海辺へ。震災後一度も浜辺の風景を見たことがない人にも海を見せたいという、町内会顧問瀬戸勲さんの強い思いがあり、瀬戸さんのガイドのもと、海辺の景色、愛林碑(海岸林植林記念碑)、八大龍王碑、汀沈稲荷社跡を巡見しました。瀬戸さんをはじめ、地元の方々から新浜のさまざまなエピソードを語り聞かせていただきながら、和やかな雰囲気で海岸を歩きました。巡見の最後に、照徳寺で住職の中澤康博さんからお寺の歴史についてお話を伺い、参加者全員で東日本大震災の慰霊碑に手を合わせました。集会所に戻ってからは地域の皆さんが用意して下さった昼食をいただきました。

　　　　
　　　

　午後の学習会では、はじめに平吹ゼミの佐々木将さんと澤口文香さんが、第１回学習会の振り返りとして、「海岸林再生と市民の役割」について報告しました。ついで菊池ゼミの学生が、「石碑・石像が伝える新浜の暮らしと信仰」と題して、共同研究の成果を報告しました。菊池ゼミでは今年６月に新浜で現地調査を行い、この地に残る数多くの石碑・石像を解読し、住民の方々の聞き取りもまとめています。報告は、「照徳寺と墓所」「吉窪神社と庚申塔」「地蔵講と山の神講」の３つの観点から整理し、新浜に生まれて根付いた信仰と暮らしのかたちを明らかにすることで、「古くからの歴史が今の生活にも息づいている」と結論づけました。
　菊池慶子教授による「愛林碑から読み解く新浜海岸林の植林史」と題する報告では、はじめに石碑が伝える暮らしと信仰の特徴を紹介したうえで、新浜の海岸林の歴史を文献をはじめ、愛林碑の碑文などから読み解き、最後に「文化財を通してたくさんの暮らしと祈りの姿がよみがえる。これらの残し方や生かし方を今後さらに模索したい」と述べました。
　以上の報告に対して、参加者からは、「新浜の知らない歴史を明らかにしてもらい、嬉しかった」「こうした古い歴史がある地域があるとは知らず驚いた」「若い世代にも知ってもらいたい」といった感想が多く寄せられました。

　　　

　その後に行われたワークショップでは、学生が進行役となりグループごとに思い出や情報交換、議論を交わし、最後にグループのまとめを話しました。「古くから伝わる海・貞山堀・農業を大切にしたい」「復興のためにももっと多くの人で賑わう場になれば」「学校と連携し、海岸の新たな生態系の観察や松の植樹など、学びの場を提供したい」などといった意見が出たほか、住民の思い出を語る場となっていたグループもあり、新浜のまちづくりについて今後の展望や希望を見いだす時間となりました。
　最後に平山新悦新浜町内会会長から講評を頂いて学習会は終了となりました。会長は「新浜400年の歴史や先人の思いを知り、私たちが復興させようと行ってきたことも間違いではなかったと感じた。ここまで復興できたのも様々な方々の支援や指導のおかげ、今後も学習会を開くので是非参加して欲しい」と呼びかけられました。　

　　　

　菊池ゼミでは学習会の二日後、参加した感想を述べ合い、アンケート、ワークショップでの聞き取りの成果なども確認しました。「地元の方と実際に話したことで、歴史についてはもちろん、新浜の現状や地域の雰囲気を知ることができた」「多くの住民が参加して、皆さん真摯に発表を聞いて感想を述べてくださったことが嬉しかった」「地域の歴史を知ろうとするすがたや、復興に対する積極的な取り組みの姿勢を知ることができた」という思いを共有しました。菊池ゼミは次回も平吹ゼミの学生と共に学習会の成果を発表することとなっています。学習会は12月４日(日)に第３回目の開催を予定しています。