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キリスト教文化研究所主催 研究フォーラム2017「宗教改革500年―歴史に学ぶ」開催報告

2017年10月26日

 10月21日(土)13:00より本学土樋キャンパス押川記念ホールにて、キリスト教文化研究所主催の研究フォーラム2017「宗教改革500年 ― 歴史に学ぶ」が開催されました。

 ちょうど500年前の1517年10月31日、ルターはヴィッテンベルク城教会の扉に95項目からなる質問状を張り出しました。この教会への問いかけは野火のように広がり、やがて宗教改革へ。プロテスタント教会が生まれる原動力となりました。今年はその歴史を見直して、その意味を問い直す世界的なイベントが各国で開催されています。ルターの宗教改革の意味と現代へのつながりを、二人の講師が探りました。

 まずは本学文学部総合人文学科の佐藤司郎教授が登壇しました。ルターが「95カ条の論題」を教会に提示したのは、当時のローマ教会が贖宥状(免罪符)を乱売して腐敗し切っていたからです。彼の心底からの言葉は、3日間でドイツ周辺諸国にまで行き渡り、民衆の心を大きく揺さぶりました。「ハンマーなき宗教改革」といわれるその一大潮流を起こしたのは、グーテンベルクの印刷革命と呼応していた側面もあることを説明されました。

 宗教改革・記念祭は17世紀にドイツのザクセン侯国から始まり世界へ広がっていきました。この500年間、ルターは民族的な英雄としてあり続け、ナショナリズムにまで担ぎ出されました。とりわけ誕生450年の1933年にヒトラーが政権を掌握して、ルターを称揚。そうした風潮の中でひとり醒めていたのが、ボン大学の神学教授カール・バルトでした。彼はルターの言葉が政治的に利用され、その真意が民衆に届いていないことを見抜いて、シニカルに世相を憂えていました。

 ルターの代表作『キリスト者の自由』の一節。「鉄と火が一つとなることによって火のごとく燃えて赤くなるように、魂も御言葉によって、御言葉の通りになる。こうして我々は、キリスト者は信仰で十分であり、義とされるために何の行いも必要としなければ、たしかにすべての戒めと掟から解放されている。彼が解放されているなら、たしかに自由なのだ。これがキリスト者の自由であり、信仰のみなのである」
 このように率直な言葉だからこそ、時代を越えて普遍的であり続けているのでしょう。ルターの言葉を読むときに、佐藤教授は三つのことを指摘。①ルターの実体験を背景に読むこと。②福音、救いの他者性、超越性、客観性、および信仰の理解。③業の位置づけ。自由と奉仕のダイナミズムを生きるキリスト者。
ルターからバルトへと連なる魂の系譜をとてもわかりやすい言葉で伝える佐藤教授もまた信仰の実体験から発露されていることを感じました。

 続いて作家・評論家の佐藤優氏が登壇されました。同志社大学大学院神学研究科を卒業後は外務省主席分析官としてロシアで活躍され、社会経済書のみならず神学に関する書籍も数多く出版されている異色の経歴の持ち主です。

 冒頭から佐藤優氏は、「ルターの宗教改革は中途半端な宗教改革だった。だからカトリックと仲よくできている」という大胆な発言をして、ボヘミア宗教改革やルターの宗教改革を経てキリスト教的な世界がどの程度解体させたかという問いを投げかけました。

 そして、どのような経緯でご自身が神学を学ぶに至ったかのルーツの物語を語りました。佐藤優氏の祖父は福島県三春の出身で、東北にもルーツの一部があるということで、もっとも影響を受けたのは沖縄県久米島出身の母親であることを伝えました。戦争中に沖縄は本土決戦の地となり、看護婦だった母親が負傷した軍の兵士を看護しながら、奇跡的に生き延びた状況をまるで再現するように詳細にじつにリアルに語り、聴衆はその生死の物語に引き込まれました。
 戦後は価値観がひっくり返り、何を信じていいかわからないという状況を母親経由で自らも感じて、無神論を学びたいという想いが湧き出し、同志社大学の神学部なら懐の深いユニークな教授陣が揃っているということで入学。その時々に適切なアドバイスを受けて深く神学を学び始め、宗教改革者のヤン・フスやルター、さらにはシュライエルマッハーやカール・バルト、フロマートカといった神学者の研究に没頭しながら思索を深められました。

 チェコにおけるプロテスタントの歴史を読み解きながら、信仰は行為と切り離されたものではなくイコールであることが重要なポイントと説明。また、フスは教会の因習の矛盾を鋭く突いて、牧師と市民の違いがどこにあるのかを問いただしたため、民衆に強く支持された宗教運動であったことも指摘されました。

 さらに、神学者カール・バルトの知見の重要性を説きながら、いまこの瞬間に起きている問題と宗教改革の問題は切り離されているわけではなく、通底していて、特に北朝鮮との問題などは宗教改革の中に超越していくヒントが隠されていることを示されました。

 休憩をはさんで、質疑応答の時間では宗教革命や信仰に関することだけではなく、日常的なことから宇宙論との関連まで幅広い質問が寄せられ、佐藤優氏と佐藤司郎教授は次々と答えられました。会場に詰め掛けた多くの来場者は静かな熱気の中で、講師の実体験に基づいた深い洞察や視点に刺激を受け、祈りのような余韻と共に終了時間を迎えました。

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