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文学部総合人文学科主催シンポジウム「苦難と救済 ―闇の後に光あり(post tenebras lux)―」の開催報告

2019年05月29日

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 5月18日(土)13:00より、土樋キャンパスのホーイ記念館ホールにて、文学部総合人文学科主催シンポジウム「苦難と救済 ―闇の後に光あり(post tenebras lux)―」が開催されました。
 4月から就任した大西晴樹学長が開会のあいさつを述べて、最初の講師として本学宗教部長であり文学部の野村信教授が登壇し、「闇の後に光あり(post tenebras lux)―ジュネーヴにおける宗教改革とその後―」と題してスライドを映しながら話されました。
 宗教改革の激動を経てヨーロッパの人々が口にするようになった言葉、「暗闇に後に、光あり」。この言葉は昔のスローガンではなく、現代にも通じる普遍性を有し、聖書の教えの根幹であることをまず指摘しました。このラテン語と続いてフランス語を詳しく言語的に分析し、その意味するところを解説しました。
 ジュネーヴ大学の宗教改革史研究所には大きな記念碑が建っています。ジャン・カルヴァンとギョーム・ファレル、テオドール・ベザ、ジョン・ノックスであり、この像のスケールからも宗教改革に与えた影響の大きさがわかります。
2012年に制定されたジュネーヴ州・憲章第17条によると、鷲と鍵のマークは1387年に採用され、16世紀代には「post tenebras lux」がスローガンとして一体化し、光なるイエスのシンボルを上に掲げたという歴史的経緯が州の紋章にも込められています。
 旧約聖書の根拠としては、天地創造の描写には「神は言われた。『光あれ』こうして光があった」という記述を原語から解説し、新約聖書では光をキリストと理解していることも示唆しました。最後にカルヴァンの生涯の略歴に触れて締めくくりました。

 次に米国ランカスター神学校講師でノートルダム大学名誉教授のDr. Randall Zachman(ランダル・ザッカマン)氏が「私を見捨てた神を叫ぶ ―「苦難を問う」カルヴァンの祈り―」というテーマで講演しました。ザッカマン氏はあらゆる人々の人生に降りかかる苦難や苦悩、災害に対しての助言を、カルヴァンの『詩篇注解』を通して丁寧に検証してくれました。この詩篇の主な作者をダビデと捉えて、彼が受けた苦しみと信仰の率直な発露からカルヴァンが感じ、考察した詩篇を読み解いてくれました。
 人は誰も苦しみに対して免疫があるわけではなく、死の恐怖をはじめ、心配事や悲しみ、疲れ、不安などがない人はいません。さまざまな試練に対して、カルヴァンの見解はそれを乗り越えていくための指針となりえます。人は誰でも逆境に陥ったときに、神に見捨てられたような心境に落ち込んでしまいます。そのような時期こそ、救済策は神を呼び求めることであると彼は説きます。「神からまさに見捨てられていると思えたとき、それは本当に適切な時であり、彼が自分自身を祈りに向かわせるもっともよい時だったのです。」祈りによって絶望や悲しみやネガティブな感情を軽減することができるからです。
 私たちの心の真ん中に神の本質を据えれば、神が私たちを見捨てることは不可能です。「たとえ悲惨さが連続してそれに圧倒されても、人生をほとんど奪われても、神は私たちから離れることはないということは、もっとも喜ばしい慰めに満ちた教えです。」とカルヴァンは語りかけています。神に見捨てられていると感じるときであっても、神の愛と哀れみに対するこの神秘的な感覚は、どんな暗闇よりも強い光を生み出します。「信仰深い人々は、多くの悩みの中に投げ込まれていますが、実に幸せです。それ以外の根拠はありません。父なる神の御顔が彼らに輝きわたり、暗闇を光に変え、いわば、死せる者をそこから蘇らせるのです」というカルヴァンの言葉で、格調高い講演を締めくくりました。

 続いて神戸改革派神学校校長で日本キリスト改革派甲子園教会牧師である吉田隆氏が登壇。「平和についてのカルヴァンの幻(ヴィジョン)」と題して、カルヴァンにおける戦争と平和をテーマに、外側の現実社会にどのような影響を与えていったのかを解析しました。はじめに苦難の象徴ともいえる16世紀の戦争を振り返り、カンブレー同盟戦争やイタリア大戦争、コニャック同盟戦争、第一次カッペル戦争からユグノー戦争まで次々と戦争が起きて、宗教改革により「聖戦論」の概念が変容し、悪影響を与えたと非難した神学者ジョン・ハワード・ヨーダーの視点を紹介。そもそも聖戦論とは何かを、アンブロシウスとアウグスティヌスの捉え方を対比して解説し、為政者や聖職者、市民ごとの各指針を浮き彫りにしました。
 また、16世紀の戦争観として、三つの側面を提示し、①人文主義的側面としてはエラスムスの「平和の訴え」、②神学的側面としてはマルティン・ルター、③実際的・法的側面としてはフランシスコ・デ・ビトリアの各概念のポイントを紹介し、社会に与えた影響を考察しました。
 その上でカルヴァンにおける戦争と平和の本題に入り、『キリスト教網要』をはじめとする神学的文書を参考に、行政官の職務の目的は「万人の共通の幸福と平和」であることを示し、「剣の権能」としては国民を守るための戦争の正当性を認めていますが、それは最後の手段であり、それ以前にあらゆる手段を講じる必要を説いています。旧約預言の言葉「剣を鋤に」を理想として、カルヴァンは26歳で書き上げた初版から、神との和解による平和に勝るものはないことを一貫して変えていないことを強調して、講演を終えました。
 その後の質疑応答では、三人の講師への質問が聴衆から相次ぎ、歴史的で専門的な内容が現在にも通じていることを実感しながら、静かに熱いシンポジウムは閉幕を迎えました。

 

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