東北学院大学

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年頭所感-大西晴樹院長・学長-

2024年01月11日

新年、「東北学院の基本方針」の実現を

 
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院長・学長 大西晴樹
 

 

 はじめに、年初の能登半島地震によって尊い命を失い、被災された方々に謹んで哀悼の意を表し、お見舞いを申し上げます。

 さて、チャットGPTが新たな時代を切り拓こうとしています。オープンな人工知能であるチャットGPTに関しては、本学において使用上の注意を文章で喚起しましたが、人間に代わって文章や画像の作成作業を行う点において、教育・研究・社会・産業など様々な分野において、大きな技術革新を引き起こすことは必須であります。ほんの20数年前に、「グーグル 革命」は、検索エンジンの飛躍的向上と文書や画像のデジタル化を促進しました。今回のチャットGPTはまだ始まったばかりですが、大学においては、チャットGPTが作成した文章や画像の真偽を判別する能力を養うと同時に、チャットGPTの利用による情報伝達の多様性や拡大、知的生産性の向上などへの対応が求められるようになるでしょう。

 こうしたデジタル革命の嵐の中で、東北学院は勇気をもって新しい時代に対応した教育研究体制を整えなければなりません。「三校祖」の一人で、初代院長である押川方義先生は、西欧列強によるウエスタン・インパクトの嵐に晒された状況の中で、1891(明治24)年仙台神学校を「東北学院」‘North Japan College’と改称する際に、「東北学院の基本方針」を著しました。そこでは、以下の2点について、東北学院の教育の目的を説いています。第1は、東北学院を小さな神学校から、必要とされている諸学を教える高等教育機関へ発展させることです。「目下は独り神学部のみを教ふと雖へども、将来に至りては、商業学なり、法学なり、文学なり、理学なり、凡そ今日日本子弟に必要なる学科を授けんと欲する目的なり」。押川先生は仙台に拠点を定めて伝道を開始する前に、開港都市新潟においてエディンバラ医療宣教会派遣の宣教医師セオボールド・パームの助手をしていました。その際、近代医学の威力を身近に感じ、当時産業革命が盛んであったスコットランドに思いを馳せて、「東北を日本のスコットランドに」と述べ、様々な専門分野からなる高等教育の必要性を宣言したのです。第2は、キリスト教による人格教育によって、教師は生徒に知識を授けるのではなく、「人物」を育てたいという意欲の表明です。「夫れ教育は、文字を理解し、事実を証明するのみを以て足れりとすべからず、人物其の物を要請するこそ、教育の主眼にてあるなれ、人を造るの道果たして如何、教師其の人を得て、子弟に生気を吹き、其の心を移すの他に其の道のなきを知る」。明治のキリスト者がいう「人物」という言葉には、人格の活用によって「人物」を育てるという目的がありました。「東北学院の基本方針」には、学問を教えるだけではなく、「子弟に生気を吹き、其の心を移す」教師によって、人格を活用できる「人物」を育てるという目標があったのではないでしょうか。

 建学から138年を数えます。今日、日本は明らかに停滞期を迎えています。大学への進学率は高まりましたが、少子化が進行し、国民総生産(GDP)はドイツに抜かれて世界四位となり、円安が進行中です。人格を活用し、満足した人生を送っている人々が減少しています。大学は、卒業単位数が多いために、座学や詰込教育から脱却できません。基礎を教える事に終始し、時代や地域の課題解決という応用までなかなか進まないのです。そのため教師は知識の伝達で事足れり、学生は知識の修得で事足れりであります。「東北学院の基本方針」が目標としている「子弟に生気を吹き、其の心を移す」教師によって、人格を活用できる「人物」を育てるまでにはなかなか至りませんでした。

 しかし、昨年4月に東北学院大学は、五橋新キャンパスの開学により都心型ワンキャンパスを実現し、時代の要請・地域の課題解決のための4つの新設学部を開設しました。また新しい教育方法として全学院生を対象に3つの新機軸を打ち出しました。第1は、文理融合教育の一環として、数理・データーサイエンス・AI教育を実施しています。第2は、アクティブ・ラーニング(AL)の推進です。TGベーシックに少人数ゼミの「課題探究演習」という科目を配置し、土樋・五橋の両キャンパスにラーニング・コモンズという全国有数のALの施設を設けました。第3は、学生自身が受け身ではなく、自ら学修目標を立てて、到達度を可視化するe-ポートフォリオ「TG- folio」を1年次から本格的に導入したことです。まさに「賽は投げられた」であります。新しい年、教職員の情熱でもって、建学の趣旨である「東北学院の基本方針」を実現していこうではありませんか。