東北学院大学

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東北における神学・人文学の研究拠点の整備事業

事業内容

事業目的

本学に関連する文化財を神学・人文学の見地から研究することによって、キリスト教物質文化の基礎が神学にあることを確認し、「東北における神学・人文学の研究拠点」を整備構築することが、本事業の目的である。この目的は、次の3つの観点に基づいている。

第一点目は、東北学院の文化財に関連する。すなわち東北学院の「デフォレスト館」が国の重要文化財に、「ラーハウザー記念礼拝堂」等が登録有形文化財に近年相次いで指定され、それら文化財のうちラーハウザー記念礼拝堂に設置された「キリストの昇天」を描くステンドグラスが、わが国に現存する唯一のヴィクトリア朝の重要工房ヒートン・バトラー&バインの作であることが判明した。それは近代イギリスにおける中世キリスト教の復興の表れであり、近代の基礎にある中世と神学の重要性、神学と人間学の関係、またヨーロッパにおける帝国的な普遍性と地域性の関係を再考する良いきっかけとなる。ラーハウザー記念礼拝堂自体も、中世復興のゴシック・リヴァイヴァルのチューダー様式であり、他方でラーハウザー嬢の基金をもとに秋保の石材を使って東北仙台の地域性のなかで建立されたことは、キリスト教が東北の地域性のなかの異物であるにもかかわらず、地域性に根ざしていることを如実に示している。本学の文化財の研究は、人文学の基礎に神学があることを再確認するきっかけとなるのであり、これらの文化財の学術研究を行うとともに、その文化的価値と意味を発信することは、仙台の文化的発展に貢献する上で重要である。礼拝堂と礼拝が市民に公開され、市民はそこでキリスト教中世に接することによって、近代と近代の物質文化の根拠についての考察を促される。

第二点目は、本学が深く関わる東北の社会的課題に関連する。震災後の東北では、例えば人口減少や高齢化が深刻化し、東北の明るい未来図は描きがたく思われている。しかしイザベラ・バードの観察、そしてクリストファー・ノス(Tohoku: the Scotland of Japan, 1918)、また柳田国男(『遠野物語』1910年)が指摘する東北のプレ・モダン的地域性は、キリスト教の観点からは、原初の感受性を残したポスト・モダン的文化遺産として観光資源となる。そのような中で、本学はすでに2015年に改革の中長期計画として策定した「TG Grand Vision 150」で提唱したように、地域と連携し社会の課題やニーズに対応できる人材の育成を長期目標に据えている。こうした人材は実践的な知識やスキルと並んで、他者との協調と寛容や、知的創造性を身につけねばならないが、その涵養は神学に裏づけられた人文主義の精神によって可能となる。

第三点目は、本学が進める大学改革である。創立以来130年間キリスト教精神に基づく人格教育を進め地域の発展に貢献してきた本学は、「TG Grand Vision 150」によってビジョン、新ブランド像、教育・研究・社会貢献の在り方などを定め、現在は計画の実行段階に移行している。大学教育の改革においては、神学が中世以来のあらゆる科学分野の出発点をなしているという日本の近代教育では看過されてきたことを踏まえて、神学にもとづいた科学的手法による世界理解を大学教育において一層深めることを目指す。そのことを具体的にカリキュラムの中で示して形にすることで、ブランディング事業の要とする。

以上の3点から、本研究は本学の文化財の調査研究をきっかけに、神学を人文学の基礎として位置付け、物質文化を再考するとともに、東北の地域性を、ポスト・モダン的価値をもつ文化資源と考える。すなわち神学と人文学の綜合的観点から物質文化を支える拠点を本学に整備し、キリスト教が成立したヨーロッパ中世の復興である礼拝堂とステンドグラスを公開することで中世キリスト教において成立した物質文化の根拠を確認する。それは同時に東北仙台の地域性を文化資源として開発することに寄与する。