教養学部

学部長あいさつ

陸奥(みちのく)に新緑の季節が到来しようとしています。冬の季節から春の季節へ移り変わるこの時は、大地が新生を祝すように、山も海も川も樹木も、ものみなが登り立つような輝きを感じさせてくれる時です。

こうした季節の移り変わりに際会して、ひとびとはどのような「移る」感覚を深めてきたのでしょうか。「移る」という感覚は、たんなる移動の感覚に留まるものではありません。物事が「移り変わる」ことには、既往の生命が死んで新たないのちに成り変わるといった生と死の交代、変化を含んでいます。また「移る」という語には、もっと別の、「染まる」とか、あるものが別のものに照り映えて光り輝くといった「映る」という語に示される経験も含まれています。古語からの意味の分節や発生を辿ってみれば、「移る」も「映る」も「憑(うつ)る」も一つの同じ「ウツル」から生まれたものに違いないのです。

いにしえの人々が衣服を染めるのに、わざわざ草木の霊となる「魑魅(すだま)」を「うつそう」としたのも、物に宿る精妙な力をわがものにしようとした願いからにほかなりませんでした。「ウツル」という語には、そうした他者のもつ優れた力を自らの力に憑(うつ)し、自分を変化・変身させ、新しい自己の到来の予感を夢見た、いにしえのひとびとの経験が詰め込まれています。

大学の四月はまさに「移る」季節、何かが死に何かが生まれ変わる「節(とき)」であります。またそうした「節」であることを覚悟する時なのです。

東北学院大学の教養学部は、今年で創設16年になります。社会が大きく変容していく現代に当たって、変わりゆくものと変わらずに留まるものとを分別し、人の世であるがゆえに変わってはならぬものを根幹として見据えていくことは、今日必要とされるべき「教養」のあり方だと思います。「教養学部」の「教養」は、その意味では、人が人として携え育んでいかねばならないものを、様々な学問の衣に袖を通して自分自身の面(おもて)にし、自分自身のペルソナにしていくことに他ならないでしょう。学生には、変えるべき「節(とき)」に臨んで変身を遂げ、また「自ら変えてみせる」といった覚悟を抱いてもらいたいと願っています。

「変わる」ことがなければ、大学でいったい何を学んだことになるでしょうか。「学ぶ」ことは「変わる」ことなのです。すなわちそれは、他者の優れた力をいただき、これまでの古い「殻」を脱ぎ捨てて、新しい自分を出発させる変革の「節」を迎えることでなくてはなりません。「学ぶ」ことは「真似る」ことのできる力に端を発しています。真似てしかるべき、優れた学問の力を備えた多様な人々が、大学には数多くいらっしゃいます。要覧に記された学問の内容は、これからあなたがたが踏み入れてみるべき深い森に生い茂っている様々な樹木のようなものです。学生諸君がこの森に足を踏み込み、そこにしばし踏みとどまって、これらの樹木の力を吸い取り、自らに「写し」て、優れた教養人へと育ってくれることを祈っています

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